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看板(屋外広告物)の安全点検義務とは?対象物・検査項目などを解説

看板(屋外広告物)の安全点検義務とは?対象物・検査項目などを解説

建物の外部に設置された看板(屋外広告物)には、定期的な点検が義務付けられています。

看板は風雨や紫外線などによる劣化が進むと、落下事故のリスクが高まるためです。

本記事では、看板点検義務の基礎・メリット・注意点を解説します。

看板(屋外広告物)の安全点検義務とは?

看板の点検が義務化されたのは、2015年2月15日に発生した落下事故がきっかけです。

札幌市にあるビルの4階に設置されていた看板が、約15m下の歩道を歩行中の女性に落下。

女性は頭と首の骨を骨折し、全治不能の傷害を負ったのです。

上記の事件は業務上過失傷害事件として扱われ、札幌地方裁判所は被告人に40万円の罰金を言い渡しています。(参考:裁判所 裁判例結果詳細

事件発生後、事態を重く見た国土交通省は、老朽化した看板の撤去・点検を地方公共団体に依頼しました。

さらに、1年後には看板の点検が義務化され、地方自治体は看板に関する条例の改正・制定を実施したのが経緯です。

1.安全点検義務の対象になる看板(屋外広告物)

安全点検義務のある看板は、以下のように定義されています。

「屋外広告物」とは、(1)常時又は一定の期間継続して(2)屋外で(3)公衆に表示されるもので
あって、(4)看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に
掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいいます(屋外広告物法(昭和 24
年法律第 189 号)第2条第1項)。

上記(1)から(4)までの全ての要件を満たしていれば、営利的なものはもちろん、
文字で表示されていない絵、商標、シンボルマークなども、その表示する内容にかかわらず屋
外広告物ということになります。

参考元:令和5年7月 東京都「屋外広告物のしおり」

ただし、下記は看板に該当しないため、点検義務が発生しません。

・ 工場、野球場、遊園地内等で、その構内に入る特定の者のみを対象とするもの
・ 街頭演説等ののぼり旗等一時的で、かつ、設置者の直接的な管理下にあるもの
・ 単に光を発するもの(サーチライト及び文字のない単一色の板への照明)
・音響のみの広告

参考元:令和5年7月 東京都「屋外広告物のしおり」

さらに、地方自治体によって詳細な条件が異なるものの、下記の条件に該当しなければ点検義務はありません。

  • 高さが4mを超える広告物
  • 地上からの上端の高さが4mを超える広告物
  • 表示面積が10㎡を超えるもの など

看板に点検義務が発生するかが不安な場合は、管轄している自治体に確認すると安心です。

2.定期点検の検査項目

国土交通省が平成29年に発表した「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」には、定期点検の検査項目が詳細に記載されています。

それでは、どのようなポイントを検査するのかを見てみましょう。

  • 基礎部:上部構造:上部構造全体の傾斜・ぐらつき、基礎のクラック・支柱と根巻きのすき間・支柱のぐらつき・鉄骨のさび・塗装の老朽度合い
  • 支持部:鉄骨接合部(溶接部・プレート)の腐食、変形、すき間・鉄骨接合部(ボルト、ナット、ビス)のゆるみ、欠落
  • 取付部:アンカーボルトや取付部の腐食、変形・溶接部の劣化やコーキングの劣化等・取付対象部(柱、壁、スラブ)や取付部周辺の異常
  • 広告板:表示面板や切り文字等の腐食、破損、変形、ビス等の欠落・側板、表示面板押さえの腐食、破損、ねじれ、変形、欠損・広告板底部の腐食、水抜き孔の詰まり
  • 照明装置:照明装置の不点灯や不発光・照明装置の取付部の破損、変形、さび、漏水・周辺機器の劣化や破損
  • その他:付属部品の腐食や破損・避雷針の腐食や破損

点検には、日常点検・定期点検・臨時点検などの種類があり、安全点検報告書の様式や点検項目は自治体によって異なります。

具体的な点検項目は、管轄する自治体のWebサイトから内容の詳細を確認しましょう。

3.看板の点検周期

看板の安全点検周期は、2~3年に1度が目安です。

看板の安全点検は設置許可更新時に実施する自治体が多く、設置許可期間は2~3年に1度の申請が必要なケースがほとんど。

たとえば大阪府では、看板の許可期間は2年以内であり、看板設置の許可更新時に点検結果を提出しなければなりません。

一方で、神奈川県横浜市では、おもに3年ごとに実施する許可更新時に点検結果の提出を求めています。

安全点検に該当する看板や点検項目と同様に、点検周期についても自治体のWebサイトまたは担当者に確認するのが確実です。

なお、看板の点検周期は、下記を参考にしています。

大阪府「大阪府屋外広告物条例に基づく屋外広告物の安全点検の概要及び報告書の記入要領」
大阪府「屋外広告物を掲出するときの手続き」
横浜市「横浜市屋外広告物条例の改正について(報告)資料2」

4.安全点検は有資格者が必要な場合も

看板の安全点検は、日常点検・定期点検・臨時点検の3種類があり、定期点検は有資格者のみが実施できます。

さらに、看板の安全点検を実施できる資格は、下記のように各自治体から指定されています。

なお、看板の点検技能講習は「一般社団法人 日本屋外広告業団体連合会」が各地で定期的に実施。

点検技能講習は、3時間半の日程で開催されており、同連合会の公式サイトにある「屋外広告物点検技能講習」のページから申し込めます。

看板(屋外広告物)の安全点検によるメリット

引用元:オーナーさんのための看板の安全管理ガイドブック

看板の安全点検を実施するメリットは、おもに下記の3つです。

  • 社会的信用・信頼を獲得:安全維持が建物周囲の環境保全につながり、社会的な信用・信頼の獲得につながる
  • 収益の安定:看板の落下事故による損害賠償リスクが下がり、収益の安定につながる
  • ブランディング:長期に渡る安全確保により、看板に記載される製品・サービス・企業名のブランディングにつながる

看板は企業・店舗などのシンボルとして、多くの人にメッセージを発信できるコミュニケーションツールです。

しかし、看板が汚れている・照明が消えているなどの場合は、看板を見た人にマイナスの印象を与えることもあります。

つまり、看板は定期的な点検で安全と清潔感を確保してこそ効果を発揮するということ。

看板の安全点検にはコストがかかる一方で、落下事故を想定すると、積み上げてきた信用・信頼などの多くを失いかねません。

看板の安全は、設置場所の周囲の安全を確保にもつながります。

看板の安全点検は必ず定期的に実施し、様々なリスク低減に努めましょう。

看板(屋外広告物)の安全点検の3つの注意点

看板の安全点検は、詳細な条件や罰則を把握せずに実施すると、思わぬトラブルに発展することもあります。

本章では、看板の安全点検に関わる罰則や見落としがちなポイントなどを解説します。

注意点1.安全点検を怠った場合は罰金

看板の安全点検を怠った場合は、30万円以下の罰金が課せられる場合があります。

重大事故を防止するために、広告主や所有者などには、看板の安全点検義務があるためです。

さらに、国土交通省 都市局 公園緑地・景観課「屋外広告物の安全点検に関する指針(案)」では、看板の許可更新時の安全点検のほかに、広告主・所有者などに実効性のある点検を年1回程度実施することを求めています。

各自治体もパトロールしているものの、自治体に頼り切るのではなく、あくまで安全確保に留意して自発的な点検を実施しましょう。

注意点2.管理者以外の点検が可能なのは有資格者のみ

自治体によっては、4m未満の看板の管理者(無資格)が点検することを認めている場合もあります。

実際に、秋田県秋田市では公式サイトの「屋外広告物の安全点検について」で、上記の旨が記載されています。

なお、管理者とは看板の許可申請書に名前が記載されている者です。

しかし、無資格の管理者が点検できる看板は限定されているため、看板の点検は有資格者に依頼するのが確実でしょう。

看板の安全点検を有資格者に依頼するのは、看板のタイプに左右されず、信頼度の高い点検を実施できるのもメリット。

看板には、アーチ型・突出看板などの種類があるほか、照明装置の有無によっても点検項目が異なります。

破損や腐食などを早期に発見するためにも、看板の安全点検は有資格者に依頼してください。

注意点3.看板点検業者は複数社を比較

看板の安全点検を専門業者に依頼する場合は、下記のポイントを踏まえて複数社を比較しましょう。

  • 過去の点検実績の豊富さ
  • 対応可能な点検の内容
  • 対応の丁寧さ
  • 費用

特に大切なのは、対応の丁寧さと適正な費用で依頼できるかどうかです。

費用の目安は、看板の規模・種類などによって異なるため、明確な数字はありません。

しかし、複数社を比較して見積もりを取得する中で、おおよその標準価格を把握できます。

優良業者であれば、見積もりや点検の詳細な内容を丁寧に説明してくれます。

逆に、説明がほとんどない業者や、見積書に詳細な内容が記載されていない業者は要注意。

業者選びには多大な労力を要しますが、看板周囲の安全確保のためにも慎重に対応することが大切です。

看板(屋外広告物)は安全点検義務を遵守しよう

本記事では、看板の安全点検義務の基礎や注意点などを解説しました。

看板を設置する際に、最も大切なのは安全の確保です。

そのためには、定期的な安全点検の実施と随時の補修が必須。

当メディアを運営する株式会社ギアミクスでは、ロープアクセス工法を活用した看板補修を実施しております。

様々な場所・形状の看板に対応できますので、補修の依頼先でお悩みの際はぜひご相談ください。