ビルやマンション、一般住宅の施工現場では、建物を鉄パイプ状の資材で取り囲む「足場」が設置されます。
一口に足場と言っても、さまざまな種類があるのを知っていますか。
足場は、施工や足場を組む場所に応じて使い分けが重要です。
本記事では、足場の種類やそれぞれの特徴、足場の設置費用の相場、業者を選ぶ際に気を付けたいポイントについてご紹介しています。
足場が安定していないと、施工の質が落ちたり、工事中に思わぬ事故が起きたりするリスクがあります。
これから施工予定がある方は、ぜひ最後までご一読ください。
目次
足場の種類とは
ここからは、足場の種類とそれぞれの特徴をご紹介します。
くさび緊結式足場
くさび緊結式足場は、別名「ビケ足場」とも呼ばれ、足場の代表的な種類です。
ハンマーを使って、足場の骨組みとなる支柱(鉄パイプ)と作業者が歩く床となるアンチ(踏板)などの部材同士をくさびで固定します。
2015年に労働安全衛生規制改正が改定され、ビルだとおよそ13〜15階相当の高さ45mまでの中層の建物の施工が可能です。
組み立てる部材が緊結されているため、ハンマー1本で組み立てができます。
足場の設置・解体が他の足場よりも簡単で、部材を運ぶレッカー車やクレーン車も必要ありません。
人力のみで足場を組み立てられるため、コストパフォーマンスの高い足場と言えます。
ただし、足場の設置場所にスペースを必要とするので、近隣との間隔が狭い場所などでは設置できないので注意してください。
枠組み足場
枠組み足場は、工場で生産された鉄製の建枠に、地上に設置して足場を固定するジャッキや足場を補強する筋交、アンチなどの部材を組み立てます。
別名「ビティ足場」と呼ばれ、橋梁工事から建築工事までありとあらゆる現場で活躍しており、工場で生産された強度の高い鉄製の部材を使用するため、安全性の高さが特徴。
地上45メートルほどの15階建てまでの高層建築物にも使用できるため、大規模修繕にも用いられるケースも多いです。
くさび緊結式足場と違いハンマーの打音がないため、近隣への騒音被害が少ないのも強みと言えます。
しかし、組み立てた状態の資材をクレーンで持ち上げるため、他の足場と比較して大掛かりな足場となるデメリットもあります。
設置場所や広い幅の搬入路や部材置き場と十分なスペースを確保する必要があるので注意してください。
単管足場
単管足場は、歴史が最も古い仮設足場です。
直径48.6mmの鉄パイプのような単管をつなぎ止め、金具であるクランプで繋いで組み立てていきます。
単管パイプとクランプを軸に、自由自在に足場の形状を変化できるため、狭い場所でも足場の設置が可能です。
しかし、作業員は鉄パイプの上で作業するため、安全面では少し危険な足場だと言えるでしょう。
さらに塗装工事の場合、塗料缶など塗装に必要なものが足場に置けないため、手が塞がってしまい、作業効率や質が落ちる可能性も軽視できません。
最近は、安全性の高いくさび緊結式足場が使われることが増え、単管足場の使用は減少傾向にあります。
しかし、スペースや予算などの関係で、密集地における戸建て住宅の塗装工事では昨今でも重宝されています。
単管ブラケット足場
最近では、単管足場より安全性が高い単管ブラケット足場が普及しています。
単管ブラケット足場は、単管に足をのせる板(ブラケット)を金具で固定した足場で、ブラケットの先端には脱落防止板または手すり柱受けを有し、500kgの荷重に耐えられるほどの強度や耐久性が必須となります。
地上から高さ15mほどの3階建て住宅など高さがある建物にも設置できます。
また単管足場と同様に、組み立ての自由度が高く緻密に調整できるため、作業の効率化が期待できるでしょう。
しかし、1つずつ部材を固定して足場を設置するため、他の足場と比べて工期が比較的長くなりがちで、足場を組むだけで丸一日かかってしまうことも少なくありません。
また固定する際に騒音が出るので、周囲への十分な配慮が必要となります。
吊り足場
吊り足場は、地面から組み上げていく通常の足場と異なり、建築物や建物の上部から作業床を鉄パイプや吊りチェーンなどで吊り下げた足場です。
足場を組み立てるための十分な広さが確保できないスペースや、足場を地面の上に組み立てることができない橋梁やプラント、溶接作業、高層ビルの清掃など幅広いシーンで用いられています。
しかし、吊り足場は落下事故のリスクが高いため、設置する際には入念な下準備と慎重な作業が求められます。
移動式足場
移動式足場は、別名「ローリングタワー」とも呼ばれています。
組み立てた足場の下部に車輪が付いており、作業員は臨機応変に移動ができます。
足場自体の基本的な構造は枠組み足場と同じで、手すりや昇降用のはしご、作業床などの防護設備などが組み込まれています。
ビル2階建てほどの高さの作業に最適で、足場の高さ調整も可能なため、天井配管や空調器、照明器などの設備や壁面塗装やクロス施工などさまざまなシーンで活用されています。
枠組み足場と同様に足場の組み立て・解体の工期が短期間で済むため、作業効率とコスト削減が見込めます。
ただし、設置できる場所に制限があるので注意してください。
足場を必要としない施工も増加中
近年では足場を設置しない無足場施工を行う業者が増加しており、特に全身ハーネスと2本のロープを使用して施工するロープアクセスに注目が集まっています。
ロープアクセスは、作業員がロープを伝って登高・下降や横方向への移動を自由自在に行えるのが特徴です。
ビルやマンション、プラントの外壁調査や塗装、橋梁点検、雨漏り補修などメンテナンス修理を実施するのに最適。
足場が設置しづらい狭くて複雑な建物や建築物にも幅広く対応ができるため、低コストかつ工期の短縮が期待できます。
また建物全体を足場で取り囲む必要がなく、外観の美観を維持しながらも工事ができるメリットもあります。
しかし、高度な技術が求められるため、ロープアクセスを実施できる業者がまだまだ少ないのがデメリットと言えます。
足場の設置費用はいくらが妥当なのか?
足場の種類をご紹介しましたが、足場の設置費用の相場について気になる方も多いでしょう。
ここからは、おおよその費用を算出できる方法についてご紹介します。
足場の面積の計算
建物の外周から足場の面積を算出する場合は、外周に建物の高さを掛けて算出します。
外周は建物の縦と横の長さを加算して算出しますが、足場は外壁から0.6m程度離して設置することに留意してください。
例えば、縦が10m、横が12mの2階建ての建築物の場合は下記のように算出します。
縦の長さ:(10m+0.6m+0.6m)=11.2m
横の長さ:(12m+0.6m+0.6m)=18.6m
縦横それぞれの外壁が2面あるので、上記を加算して2倍した数字が建物の外周です。
足場の外周合計は、(11.2m+18.6m)×2=59.6m
最後に、足場の外周(59.6m)に2階建ての平均的な高さ(6m)と屋根を越えて設置する足場の高さ(1m)を掛けましょう。
足場面積:59.6m×(6m+1m)=417.2㎡
足場費用の計算
算出した足場面積をもとに、足場費用を算出しましょう。
足場費用=足場面積×(足場費用/㎡+飛散防止ネット/㎡)となります。
足場の種類により費用相場は異なるため、下記を確認してみてください。
- くさび緊結式足場:800~1,200円/㎡
- わく組足場:1,000~2,000円/㎡
- 単管足場:600~800円/㎡
- 単管ブラケット足場:800~1,200円/㎡
- 吊り足場:500~800円/㎡
- 移動式足場:1日8,000円程度~
飛散防止ネットは、100〜200円/㎡を請求してくる業者が多いです。
「足場代無料」は要注意!
結論から先に言いますと、「足場代無料」はあり得ません。
足場を設置する際には、足場の部材を運ぶ運搬費や足場を組む施工・解体費、人件費が発生し全施工費の20%を占めると言われています。
高額な足場費用を無料にするのは業者にとって損するだけです。
「足場代無料」という謡い文句で契約し、その他の施工費に少しずつ上乗せして請求してくる業者もいますので、くれぐれも注意してください。
ここだけは押さえておきたい!足場の2つの常識とは?
ここからは、必ず押さえておきたい足場の2つの常識についてご紹介します。
足場での施工を中止するケース
足場での作業は屋外で行うため、悪天候や自然災害が発生すると実施できません。
労働安全衛生規則で、高さ2m以上の足場での作業を中止するケースは下記のように定められています。
- 強風 10分間の平均風速が毎秒10メートル以上
- 大雨 1回の降雨量が50ミリメートル以上
- 大雪 1回の降雪量が25センチメートル以上
- 中震以上の地震、 震度階数4以上
- 暴風 瞬間風速が毎秒30メートルを超える風
悪天候や自然災害が発生しなくても、足場が倒壊する恐れは避けて通れません。
施工現場では、足場を入念に固定したり、強風が予想される場合は足場に負荷をかける養生シートを畳んだりなど2次被害を防ぐ対策が徹底されています。
足場の組み立てには、国家資格が必要
安全衛生法施行令の6条により、高さ5m以上の足場を組む際には「足場の組立て等作業主任者」という国家資格を有する者を管理者として選任する義務があります。
また労働安全衛生法88条では、高さが10m以上で組立から解体までの期間が60日以上の足場を組む場合は、労働基準監督署への事前申請が必須です。
さらに平成27年の労働安全衛生法の改正により、足場の組立てを行う全作業員が特別教育を受講するよう定められました。
足場業者を選ぶ4つのポイントとは?
ここからは、実際に足場専門の業者を選ぶ際に気を付けておきたい4つのポイントをご紹介します。
保険に加入している
足場の設置・解体の際に100%事故が起こらないとは言い切れません。
業者が、請負業者賠償責任保険に加入しているか否かを必ず確認しましょう。
加入していないと、万が一事故が起きた場合に支払い能力が十分にない業者とトラブルになる可能性があります。
また保険のプランも千差万別なため、業者が加入している保険の保証内容を事前に確認することをおすすめします。
不当に安い見積もりを出してこない
先述した通り、「足場代無料」など不当に安い見積もりを提示してこない業者を選ぶことをおすすめします。
見積もりが相場よりも低価格の場合、後から追加料金の請求などをされてトラブルが起こる可能性がゼロではないので注意してください。
事前打ち合わせや相談を親身に行ってくれる
特に初めて足場の設置を依頼する際、不安や不明点も多いでしょう。
契約を結ぶ前に、打ち合わせを丁寧に行い、質問にも親身に対応してくれる業者を選びましょう。
誠実な対応により、安心して任せられます。
施工経験と実績が豊富
足場の現場では、豊富な施工経験と実績が何よりも物を言います。
また、施工の実績が伴っていない業者だと、過去に事故やトラブルが多いかもしれません。
過去に事故を起こしたことがない、施工経験と実績が豊富な業者を選べば、正確な施工は間違いなしと言えるでしょう。
まとめ 足場の種類を知り、現場の状況や工事に適した足場を選ぼう!
一口に足場と言っても、現場の状況や工事に対応してさまざまな種類があります。
最適な足場を選べば、無駄な時間やコストがかからず、効率的に施工ができます。
株式会社ギアミクスでは、ロープアクセス事業を提供しています。
ロープアクセスなら、足場の設置が難しいとされる狭くて複雑な建物や橋梁などにも低コストで施工が可能です。
さらに建物全体を足場で覆わないため、外観の美観を損なうことなく防犯面でも安心。
ギアミクスのロープアクセス事業は、豊富な実績と経験で顧客から高い信頼を得ています。
気になる方は、ぜひお問い合わせください。
※ロープアクセスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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