ビルの外壁は、紫外線や風雨にさらされるため、経年劣化によりひび割れや雨漏りなどのリスクが生じます。
さらに、外壁のダメージを放置すると、落壁事故につながる可能性も想定されます。
しかし「ビルの補修はいつすればいいの?」「どんな補修工事をするの?」などとお困りの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ビルの外壁の基礎知識や補修が必要なタイミング、補修工事の種類を解説します。
外壁補修業者選びの選び方も、あわせてご覧ください。
目次
ビル外壁の種類と特徴
ビルの外壁は、種類によって特徴が異なると同時に、耐用年数や劣化の進み具合にも差が生じます。
自社ビルの外壁の種類を把握しておくことで、より適切なメンテナンスやチェックが可能になるでしょう。
本章では、ビル外壁の種類と特徴を解説します。
1.高耐久な「ALCボード」
ALCボードとは、コンクリートを気泡化した軽量な外壁材です。
耐熱性・耐火性・耐久性にすぐれており、約10~15年ほどを目安に塗り替えます。
ただし、ALCボードは水に弱い点がネック。
ひび割れ(クラック)や色あせが発生しやすく、塗装の劣化を放置すると、内側からくずれてくる可能性があります。
2.軽量&断熱効果あり「金属系サイディングボード」
金属系サイディングボードとは、スチール・アルミなど、金属を素材とした鋼板です。
軽量・高耐久で断熱性にすぐれており、既存の壁への貼り付けができる点がメリットです。
塗装の目安は約10~15年あるものの、さびや傷が発生しやすいのがデメリット。
しかし、定期的に交換することで美観を保てます。
3.防火性にすぐれる「モルタル壁」
モルタル壁とは、砂・セメント・水を混ぜ合わせた外壁材です。
ビルの外壁にコテで塗りつけて施工しますが、塗装の目安が8~10年とやや短く、急激に劣化が進むケースがあったため近年ではあまり使用されていません。
防水性能が低下すると、モルタルの剥離・ひび割れ・色あせ・カビなどが発生します。
4.近代的な印象を与える「ガラス壁」
ガラス壁は、その名の通りガラスを外壁材の代わりに活用した壁です。
コンクリート壁と比較して軽量で、スタイリッシュかつ近代的な印象を与えます。
通常の窓と同様の方法でメンテナンスできる手軽さがある反面、メンテナンスしなければ苔や水垢などが付着しやすいのがネック。
ガラス材はコーティング剤も多いため、メンテナンス時に施工して防汚性を高めるとメンテナンスのコストと手間が軽減します。
5.塗装不要の「タイル壁」
タイル壁とは、磁器・陶器・石器などを主材料としたタイルを使った壁です。
ビルの外壁に多用されるのは磁器質のタイルで、耐火性・耐久性にすぐれており塗装は不要です。
タイルは苔が生じる可能性があるものの、近年では雨で汚れが落ちる・太陽光で汚れを分解するなどの機能性が高い製品もあります。
ビル外壁補修のタイミングとは?
ビルの外壁補修工事は「12年」が目安です。
しかし、12年という周期は建築基準法で定められた厳密な数値ではありません。
そのため、12年を目安にしながら劣化状態に応じた補修工事の実施が必要です。
本章では、補修工事が必要な劣化の状態を解説します。
1.ビルの外壁塗膜が劣化
ビルの外壁を素手で触ったときに、白い粉が付着したときは補修工事が必要なサインです。
上記の症状はチョーキング(白亜化現象)といい、外壁塗装が太陽光・風雨に起因する劣化によって発生します。
チョーキングが発生している場合は、劣化によって塗膜の外壁保護作用が機能していない状態です。
2.ビルの外壁の色褪せ・汚れが酷い
ビルの外壁に色褪せ・汚れ・カビ・サビなどが発生した場合は、修繕をおすすめします。
上記の状態は、落壁するリスクは低い状態であるものの、清潔感が損なわれていて訪問者に悪印象を与えるためです。
特に、マンションやアパートなどの場合は、建物の外観や清潔感は入居者数に大きな影響が出ることも。
塗膜がはがれて外壁にダメージが蓄積されてしまう前に、可能な限り早めに対処しましょう。
3.ビルの外壁が膨れ・ひび割れが目立つ
ビルの外壁に膨れやひび割れが生じる原因は、塗装の劣化による防水効果の低下です。
塗装の防水効果が薄れて、外壁が水分を吸収すると、温度変化により膨張と収縮を繰り返します。
結果的に外壁に負荷がかかり、膨れやひび割れを引き起こす仕組みです。
外壁の膨れやひび割れは、落壁事故のリスクが高まっている状態なため、早急に補修工事を実施してください。
4.外壁塗装の耐用年数が迫ってきた
外壁の補修工事は、塗装の耐用年数も目安のひとつです。
塗装の耐用年数は、素材の種類によって以下のように異なります。
- アクリル系塗料:3~5年
- ウレタン系塗料:5年~10年
- シリコン系塗料:7~15年
- フッ素系塗料 :10年~20年
- 無機塗料: 10年~25年
さらに、塗装の耐用年数はメーカーや製品によっても異なります。
そのため、素材による耐用年数に加えて、製品ごとの公表値を確認しておくと確実です。
ビルの外壁補修工事をする2つの目的とは?
ここからは、ビルの外壁補修工事をする2つの目的を解説します。
目的1.ビルの美観を保つ
ビルの外壁は、年数が経つと塗膜の剝がれや色褪せ、汚れ、カビが目立つようになります。
外観の悪化はビルの入居者数に大きな影響を与えるため、ビルの美観を維持しましょう。
また、ビルの外観も流行り廃りがあります。
竣工時には最新のデザインビルであっても、年数が経つと古臭く感じるかもしれません。
外壁工事によって、デザインを一新することもできるため、必要時は検討するのがおすすめです。
目的2.ビルの耐久性を維持する
建物は経年劣化により、耐久性や防水性が低下します。
耐久性が維持できなければ、雨漏りやビルの構造部分が腐食し、建物自体の寿命が縮まる恐れがあります。
ビルの外壁補修工事をすれば、劣化した塗装面が竣工時と同じ状態に近づき、劣化による建物のダメージを防げます。
定期補修工事でビルの耐久性を維持できれば、長期的に見て補修費用を抑えられるメリットもあります。
ビルの外壁補修の種類とは?
ビルの外壁は、強度や外観を保つために、一定期間ごとに大規模な修繕工事の実施が必要です。
国土交通省でも定期的な修繕工事を推奨しており、以下のように外壁の種類によって推奨時期が異なります。
- タイル外壁:約10~12年
- 外壁の塗装:約10~15年
- 鉄部の塗装工事:約5年
- コンクリート補修工事:約10~12年
しかし、大規模修繕工事の種類は様々で、わかりにくいと感じることも。
本章では、補修工事の種類を解説します。
1.仮設工事
仮設工事とは、外壁補修工事が終了したのちに撤去する一時的な施設や設備の工事です。
ビルの外壁補修工事を行う際に、必要な足場仮設・ゴンドラ仮設工事や高所作業車も仮設工事の中に入ります。
足場設置の目的は、作業効率の向上と施工品質の確保。
また外壁塗装工事の場合、足場に飛散防止シートをかければ、ビル近隣に対する塗料の臭いや飛び散りを防げます。
2.外壁調査工事
火災や地震などの自然災害や老朽化による外壁の落下事故を防止するために、平成28年6月建築基準法の改正がされ、外壁の全面打診調査が義務付けられました。
建築基準法第12条では、以下のように定めています。
不特定多数の人が利用する建築物について所有者・管理者は、専門技術を有する資格者に定期的に調査・検査させ、安全性を特定行政庁に報告すること
参照:建築:新たな定期報告制度の施行について – 国土交通省 (mlit.go.jp)
報告を怠ることは法令違反となるため、注意が必要です。
3.外壁清掃
外壁清掃とは、ビルの外壁の汚れや塗膜の劣化を除去・防止するための高圧洗浄です。
ビルの外壁洗浄により、ビルの美観を保つと同時に外壁の劣化を未然に防げます。
また、ビル外壁面のコーティング施工を実施すれば、紫外線・排気ガス・酸性雨などから外観を保護し防水効果も高められます。
4.外壁下地補修工事
ビルの外壁や天井は、太陽光や雨風の影響で外壁のひび割れ(クラック)や欠損などが発生しやすくなります。
外壁塗装を施工する前に、外壁下地のひび割れや爆裂や欠損などを補修します。
細かなひび割れはパテで補修できるため、DIYを検討する場合もあるかもしれません。
しかし、知識や経験がない場合は症状の悪化につながることも。
DIYを検討する際は「外壁補修をパテでDIYする方法を解説!修理可能かの判断ポイントも」の記事も参考になさってください。
5.ビルの外壁塗装
外壁塗装は外壁の美観を保つだけでなく、防水機能や断熱機能の役割を担っています。
また、手すりや階段、エレベーターの扉などの鉄部の塗り直しを行う鉄部塗装工事も重要です。
さびは外観を悪くするだけでなく、門扉などの構造物の機能性を低下させてしまいます。
さびが発生してからの補修では手遅れになる可能性が高いので、早めに補修しましょう。
6.外壁タイル工事
タイルの浮き(タイルと外壁下地に隙間が生じた現象)やひび割れ、欠損などの劣化を放置するとタイルが剥離して落下してしまう可能性があります。
2008年4月1日に建築基準法施行規則が改正され、外壁がタイル張りのビルは完成から10年を目安に、タイル部分の「全面打診調査」を実施・報告が義務付けられました。
タイルのひび割れや欠損がある場合は、タイルの張替えを早急に施工しましょう。
また、タイル表面に現れる白い汚れは、白華現象(エフロエッセンス)と言います。
タイルの接着面の隙間から雨水が浸入し、タイル裏面に施されたモルタルに含まれる水酸化カルシウムが溶け出してたもので、人体には無害と言われています。
ただし、白華現象はビル内部の強度が低下する可能性もあるため、洗浄剤を使用して高圧洗浄をするのがおすすめです。
7.シーリング工事
シーリングとは、気密性や防水性を高めるために、建物と外壁ボードの継ぎ目部分の目地や外壁とサッシなどの隙間を専用の溶剤で充填することを指します。
紫外線によりシーリングが劣化すれば、亀裂やひび、乖離が発生して雨漏りを引き起こしかねません。
既存のシーリングを全面取り除き補充する「打ち替え」か、破損した部分だけを補充する「増し打ち」でシーリングの補修を行います。
なお、雨漏りが発生したときの対処法は「雨漏りの応急処置を解説!自分ですぐにできる簡単な方法とは?」に掲載しています。
8.防水工事
ビルの外階段や屋上の床面には、防水工事が欠かせません。
なぜなら、高層になるほど紫外線や雨風の影響を受けやすく建物の劣化を早めるためです。
屋上の防水効果が低下すれば、浸水や雨漏りの原因となり、ビル全体が水浸しになる可能性もあります。
- アスファルト防水工法
- FRP防水工法
- シート防水工法
- ウレタン防水工法
防水工事には、上記のように様々な防水種類や工法があるため、建物にあった防水施工を選びましょう。
ビル外壁補修工事の流れ
外壁補修工事のおもな流れは以下の通りです。
- 専門業者による現地調査
- ビル居住者や近隣住民の挨拶周り
- 足場の設置
- 外壁表面の高圧洗浄
- 外壁表面のひび割れやシーリング補修、ケレン(錆取り)などの下地処理
- 養生
- 外壁全面の補修・塗装工事
- 防水工事
- 足場の解体と撤去
- 引き渡し
より確実な補修工事には、事前に現地調査を実施してもらうのがポイント。
所要時間はヒアリングや建物の調査を併せて1時間前後なのが一般的なのに対して、補修工事に必要な材料や工具を事前に準備できるため、工期の短縮に期待できます。
なお、現地調査では以下の内容を確認します。
- 外壁のひび割れ具合やチョーキングが発生していないか、屋根に錆が発生していないか
- 面積の算出
- 作業車の侵入経路や搬入搬出が可能かどうかの立地の確認
図面や写真だけでは把握できない実際の建物の状況や立地などを確認して、予算や要望に見合った見積書を作成してくれます。
ビルの居住者へ近隣にどの程度迷惑がかかるか、補修工事をすることで発生する被害についても予測してくれるため、苦情対応がしやすいメリットがあります。
ビル外壁補修工事の費用は決して安くはないため、補修工事が始まる前に業者にしっかりと調査を依頼しましょう。
ビル外壁補修工事のコストを削減する2つのポイント
「ビル外壁の補修工事にかかる費用を少しでも抑えたい」と考えるのは当然です。
しかし、コストばかりに気を取られると、価格に見合わないずさんな工事を実施されることも。
本章では、悪徳業者を避けながら、より低コストにビルの外壁補修工事を実施するための2つのポイントを解説します。
ポイント1.複数業者を比較
複数業者を比較することで、補修工事にかかる費用の相場や、業者の対応の良し悪しを比較できます。
特に重視すべき比較点は以下の3つです。
- 対応の丁寧さ:電話・メールなどの対応を比較。対応が丁寧であれば、工事に関する疑問や不安点など、細かなフォローに期待できる。
- 見積書:工事の詳細が記載されているかや価格帯を比較。詳細が記載されていない場合は、内容を確認してムダなコストが発生していないかを確認する。
- アフターフォローの充実性:工事終了後に発生したトラブルへの対処法や保証期間を確認。外壁補修後は、半年ほど経過してから不具合が発生することもあるため、十分な備えができるかをチェック。
外壁の補修工事は、規模の大きさに比例して高額になります。
そのため、コストに見合った工事を施工してもらうのは当然のこととして、細かな不安点や現場で発生したトラブルの対処法などもきちんと確認しておきましょう。
ポイント2.ロープアクセス対応業者を選択
ロープアクセスとは、ロープで体を吊り下げて工事を実施する無足場工法のひとつです。
おもなメリットは、足場不要で低コストなことと、柔軟性が高く様々な形状のビルに対応できること。
特に、足場設置費用が不要なのは大きなポイントです。
工期に足場の設置・撤去が含まれずに短期間で工事が終了する上に、数百万円になる可能性のある設置費用がかかりません。
さらに、ロープアクセスは隣接した建物が近い・足場設置が困難といった場合も対応できます。
なお、ロープアクセスの詳細は「ロープアクセスで外壁や屋根塗装は可能?基礎・手順・費用などを解説」で解説しています。
ビル外壁補修の専門業者をお探しの方へ
本記事では、ビル外壁補修のタイミング・種類などを解説しました。
ビルの外壁補修は高額なコストが発生する一方で、落壁事故を防止するためにも定期的に実施しなければならない工事です。
ロープアクセス工法であれば、足場の設置費用がかからず、大幅なコストダウンが可能でしょう。
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