使用する電力の容量によって、契約内容は異なります。
アンペア数を下げると基本料金が安くなりますが、使用できる電気の容量も下がってしまうため注意が必要です。
ビルや施設に設置するキュービクルも同様に、用途や規模に合わせて容量を決めなければなりません。
この記事では、キュービクルの容量の決め方や計算方法、内部構造を解説します。
目次
キュービクルの容量を知る前に確認すべき単位
まずは、キュービクルの容量を計算する際に使用する電力の単位を確認しましょう。
電気関係の職業や学校に通っていなくても、学生時代に電圧を求める計算などの基礎学習はしたはずです。
とはいえ、日頃、電化製品を購入または使用する際、ボルト数の高さしか気にしないため、電力の基礎知識を覚えていない方も少なくないでしょう。
キュービクルの容量を知るうえで、確認すべき単位がいくつかあります。
そこで、V(ボルト)・A(アンペア)・VA(ボルトアンペア)・W(ワット)について確認してみましょう。
V(ボルト)
V(ボルト)は馴染みのある単位で、電圧であるため、言い換えれば電力の力ともいえます。
一般的な家庭用電化製品のほとんどが100Vです。
100Vといってもイメージしにくいでしょうから、乾電池と静電気を例に説明します。
乾電池の多くは、電化製品よりも電圧が低い1.5Ⅴで、リチウムイオン電池でも3Vほどです。
一方、冬に発生しやすい静電気の電圧は乾電池よりも低いと思いがちですが、実際には異なります。
静電気の電圧はかなり高く、一般的に3000Vほどです。
電化製品より圧倒的に電圧が高い静電気ですが、人体への影響はあまりないですよね。
それは、電流であるA(アンペア)が関係しています。
A(アンペア)
電気の力であるV(ボルト)に対して、A(アンペア)は電気の流れといえます。
静電気の場合、電圧が3,000Vと高くても、電流が低いため人体への影響がほとんどありません。
反対に、電圧が低くとも、電流が高ければ威力の大きい電気となります。
電圧と電流をかけて導き出す単位が、VA(ボルトアンペア)とW(ワット)です。
VA(ボルトアンペア)とW(ワット)
VA(ボルトアンペア)は、電圧Vと電気Aをかけた値を表す単位です。
キュービクルの容量を表す単位として使用するkVA(キロボルトアンペア)も同様に、1,000VA=1kVA、1,000VA=1kmといえます。
また、馴染みのあるW(ワット)も大まかに見ればVAと同じです。
VAは見かけ上の電力(皮相電力)であり、Wは実際に機器で使用される電力(有効電力)となります。
キュービクルの容量について
キュービクルの容量は、基本的に変圧器(トランス)の総容量を表します。
キュービクルの容量は、設置する建物の面積によって異なるでしょう。
コンビニや1軒の飲食店舗など小規模な建物の多くは、100kVAの小型キュービクルを使用しています。
小規模~中規模の施設やスーパー、工場などは、200~650kVAのキュービクルを設置している場合が一般的です。
大型商業施設や空港など大規模な施設は、大量の電力を使用するため、変電所級のキュービクルを使用します。
キュービクルの容量は建物の大きさに比例する傾向にありますが、最も重要なのは使用する電気機器の容量です。
キュービクルを設置する際は、用途や使用する電力に合った容量を選びましょう。
キュービクルの容量の決め方
キュービクルの容量の決め方は少し複雑のため、まずは基本的な考え方を解説します。
キュービクルの容量の決め方は、業者に依頼するか自分で計算するかの2パターンです。
業者に依頼して決める
電気工事をおこなう会社やメーカーなどの業者へ依頼すると、施設内で使用する機器すべての電圧を計算してもらえます。
独立店舗や敷地が広く設置場所に余裕がある場合でも、増設やキュービクルの交換などの工事が可能です。
しかし、ビルや狭い敷地にキュービクルを設置する場合、建物内で使用する容量の割り振りを決めなければなりません。
仮に設置の完了後に容量を増やす場合は、大型クレーンで配備したり、工事中の警備員に交通整理をしてもらったりする必要があるでしょう。
設置してからキュービクルの容量を増やすには、時間帯などの周辺状況を確認しつつ計画を立てて、工事しなければなりません。
その場合、工事費が非常に大きくなる可能性が高いため、キュービルの用途などをしっかりと考慮して容量を決めることが大切です。
自分で計算して決める
自分でもキュービクルの容量を計算できますが、専門的な知識がない場合は難しいといえます。
なぜなら、学校で習う単純な計算ではなく、電気工事士などの専門知識が必要なためです。
誤った計算をしてしまうと、容量が多すぎて余計な費用が発生したり、逆に足りなかったりする可能性があります。
専門的な知識を持たない人がキュービクルの容量計算を自分でおこなうのは、おすすめしません。
ただし、大体の容量を計算し今後に役立てる場合や、業者から不当な計算をおこなわれていないかを判断するために自分で計算するのは良いでしょう。
キュービクルの容量計算
自分でキュービクルの容量を計算する場合、2種類の計算方法があります。
- 単相トランス(VA):出力電圧(V)×出力電流(A)=容量(VA)
- 三相トランス(VA):出力電圧(V)×出力電流(A)×√3=容量(VA)
単相とは、一般家庭で利用する電気交流を意味します。
単相トランスを使用するメリットは、キュービクルの容量が小さく済む・仕組みが単純のため本体価格は比較的安い・騒音などが小さい点です。
一方、送電効率が悪いため電気損失が多く発生する点がデメリットといえます。
三相トランスは、キュービクルの容量が大きい反面、単相に比べて価格が高い点が特徴です。
しかし、送電効率が良いため電気を無駄にしにくい構造といえます。
容量が大きい施設でパワーを発揮するため、大きな施設で使用されているキュービクルは、基本的に三相トランスです。
キュービクルの内部構造
キュービクルは、発電所から送られる高圧電流を、さまざまな機械で使用できる電圧まで下げる変電所のような役割を担う設備です。
製造メーカやキュービクルによって多少異なりますが、基本的には同じ役割を担っています。
すべてのキュービクルでは、同じような部品が使用されており、内部は以下の機械や部品によって構成されています。
なお、キュービクルの仕組みをより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
キュービクルの設置基準とは?基礎知識や仕組み、種類別の内部構造を解説 – ギアミクス
変圧器
高電圧の電流を、必要な電圧へ変える機械です。
電柱に付いているトランスのようなものがキュービクルにも内蔵してあります。
高圧ケーブル
高圧の電気を電線から引いたり、施設内に送り込んだりする部品です。
気中開閉器
外の雨や砂ぼこりから、機械の内部を守る役割を担っています。
特に、屋外にキュービクルを設置する場合には気中開閉器が重要です。
避雷器
キュービクルを雷から守ります。
コンデンサ
電気を蓄えたり、放出したりする電子部品です。
変換した電気を安全に送電するためにコンデンサは必要な部品といえます。
電圧計・電流計
電気の量を数値化する部品で、必要な電圧の電力になっているかなどの検査に使用します。
キュービクルの構造を理解すると点検に役立つ
キュービクルは、電柱に付いているトランスのように電力会社が点検やメンテナンスするわけではありません。
キュービクルの点検は、設置している施設の会社が点検やメンテナンスをおこなう必要があります。
それでは、キュービクル設置後の点検について見てみましょう。
キュービクル設置後の点検は義務
キュービクルなどの高圧受電設備を設置している施設は、変電・受電設備を自分たちで管理や修理しなければなりません。
点検は電気事業法によって義務付けられており、怠ると大きな事故につながる恐れがあるだけでなく、法的にも問題が生じます。
一般家庭などでは電力会社は管理をおこない、管理費は電気料金として徴収する仕組みです。
一方、高圧受電契約によりキュービクルを使用すると、管理を自らおこなう代わりに電気料金を安く利用できます。
点検方法
キュービクルの点検には、月次点検と年次点検があり、定期的におこないます。
点検は、設置者が選定した電気主任技術者がおこなわなければなりません。
月次点検と年次点検では、検査内容が異なります。
月次点検
月次点検では、キュービクル内部の計器類やケーブル、本体などに損傷や劣化症状がないかを確認し、状態が悪い場合は交換が必要です。
キュービクルで使用している部品は、それぞれ安全に使用できる年数(耐用年数)が決まっています。
なお、キュービクルの耐用年数について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
キュービクルの耐用年数とは?設置する必要性や必要な手続きを解説 – ギアミクス
メンテナンスを定期的におこなえば、耐用年数を超えてもキュービクルを使用できます。
年次点検
1年に1度おこなう年次点検は、月次点検では修繕できない部品や細かい点検をおこないます。
年次点検は、キュービクルの送電を止め、施設内をすべて停電して実施。
特に高い電圧が常にかかっているケーブルやヒューズ、コンデンサなどの消耗品や、不具合のある個所などを中心に点検します。
目視だけでは見つけについ部分を細かく点検すると、より高い安全性の確保が可能です。
キュービクルの容量を計算して求めよう
この記事では、キュービクルの容量の決め方や計算方法、内部構造を解説しました。
キュービクルの容量を決まる際には、専門的な知識を持った人に計算してもらう必要があります。
自分で容量を計算できますが、間違えると余計な費用や時間がかかるため、初めから業者へ依頼した方が良いでしょう。
とはいえ、自らが管理する施設や設備についてある程度理解しておかないと、何かトラブルが起こっても素早い対応ができません。
すべて業者に任せるのではなく、自身でも最低限の知識を付けておくことは大切です。