ロープアクセス工法とは?基礎・メリット・デメリットを解説

ロープアクセス工法とは?基礎・メリット・デメリットを解説

ロープアクセス工法は、難所や高所の新たなメンテナンス手法として注目を集めています。

なぜなら、ロープアクセス工法が安全性とコストパフォーマンスを両立しているためです。

ロープアクセス工法が注目を集める中で「本当に安全性を確保できるのか」「なぜ低コストを実現できるのか」といった声が聞かれます。

本記事では、ロープアクセス工法の基礎知識に加えて、メリットやデメリットを解説します。

ロープアクセス工法とは?

ロープアクセス工法は、ヨーロッパで洞窟探検用に考案された技術がルーツです。

現代では、レスキュー隊でも活用される高度なロープ技術としても知られています。

本章では、ロープアクセス工法の安全性の高さと低コストの理由などの基礎知識を解説します。

1.柔軟性と安全性を両立した技術=ロープアクセス工法

ロープアクセス工法には、メインロープとバックアップロープ、そして2つのアンカーが使用されます。

アンカーとは、ロープの支点となるパーツであり、建物などに固定して安全を確保する器具のこと。

ロープとアンカーを、それぞれ2つずつ使用することで、片方が外れた際も安全を確保する仕組みです。

ロープアクセス工法は高度な技術なため、作業員のさらなる安全確保を目的として「ISO22846」に準じたヨーロッパの産業用の資格取得を推奨している会社も増えてきました。

2.ロープアクセス工法が注目される背景

ロープアクセス工法が注目されている理由は、小規模の分割工事に最適なためです。

どれだけ頑丈な建物でも紫外線や雨風の影響で劣化は避けられないため、建築物の安全と資産価値の維持には15〜20年に1度の大規模修繕工事は必須です。

そして、まとまった修繕工事には、高額なコストがかかります。

予算に制限があり、修繕工事が先延ばしになる場合もあるでしょう。

さらに、外壁や躯体などの調査を実施しても、コストを考慮して遠隔での調査にとどまるケースも。

ロープアクセス工法を利用した場合は、足場の設置・解体に発生するコスト削減が実現します。

たとえば、2000㎡の面積を足場工法で調査すると、足場の設置・解体費用も含めて6日間で245万円ほどかかります。

対して、同様の条件でロープアクセス工法を用いると、2日間約70万円と約3分の1のコスト・期間で施工が可能。

足場の設置が不要なロープアクセス工法には、足場の倒壊や落下物などのリスク軽減・交通規制関連の手続き不要、などのメリットもあるでしょう。

ロープアクセス工法は、修繕・点検にかかるコストのみで済み、分割工事にも対応する柔軟性の高い方法です。

なお、ロープアクセス工法に対応している業者をお探しの場合は「東京のロープアクセス技術専門会社を紹介!難所・高所での作業を提案」をご覧ください。

ロープアクセス工法向きの2つの現場とは

ロープアクセス工法は、足場不要で迅速な点検・調査・修繕ができます。

それでは、具体的にはどのような現場が向いているのでしょうか。

本章では、ロープアクセス工法向きの現場を解説します。

現場1.足場設置が困難・不可な場所

ロープアクセス工法は、足場が設置できない高所や難所での点検・調査・診断が可能です。

建物の点検は、建物の近くまで行き目視および打診する必要があります。

たとえば、橋梁は5年に1度の定期点検が義務付けられ「近接目視」による点検が必須となりました。

そのため、点検車や高所作業車が届かない場所・足場が掛けられない現場にはロープアクセス工法が有効です。

川中に立つ橋梁以外にも、コンクリートダム堤体・トンネルの変状調査・鉄管路の老朽化診断でロープアクセス工法が活躍しています。

足場が設置できない狭い場所でも、作業員1人が入れる40㎝ほどの隙間さえあれば作業が可能です。

現場2.緊急的な対処が必要な場所

ロープアクセス工法は、緊急対応が必要な場所での素早い補修が可能です。

通常の足場は、2〜3人の作業員が約1日かけて設置します。

また、足場の高さが10m以上で組立から解体までが60日以上の場合には、設置工事開始の30日前までに所轄の労働基準監督署長に届け出が義務付けられています。

一方でロープアクセス工法は、作業員・ロープ・道具があればすぐに高所作業が可能です。

時間を要する届出も不要なため、より迅速な対応を実現。

よって、ロープアクセス工法は緊急性の高い作業が必要な場面に適しているといえます。

ロープアクセス工法・ブランコ工法・ゴンドラ工法の違い

ロープアクセス工法は足場を設置しない「無足場工法」のひとつであり、ブランコ工法やゴンドラ工法も同じ工法に分類されます。

いずれの工法もロープを使用するという点では同じですが、特徴は大きく異なります。

本章では、ロープアクセス工法とブランコ工法・ゴンドラ工法の違いを解説します。

1.ブランコに座って作業「ブランコ工法」

ブランコ工法は、ロープで吊るしたブランコに従業員が乗って作業します。

古くから活用されている工法であり、高層ビルの窓清掃をイメージする人もいるかもしれません。

しかし、ブランコ工法は産業用ではないロープを使用する場合もあり、安全性が低いのがデメリットです。

一方でロープアクセス工法は、厳しい安全基準を満たした産業用の器具を使用するため、ブランコ工法と比較して高い安全性を確保できます。

2.ゴンドラ上で作業「ゴンドラ工法」

ゴンドラ工法は、建築物の屋上からワイヤーロープで吊り下げた可動式のゴンドラに乗る作業法です。

作業効率が良く広範囲の作業もスムーズにできますが、保有している業者が少ないため高額な費用を請求される場合があります。

さらに高層ビルでは、ゴンドラを必要な高さまで運搬する手間もかかるでしょう。

ロープアクセス工法に必要な道具は持ち運びが容易なため、ゴンドラ工法と比較して低コストかつ迅速に作業できます。

ロープアクセス工法の3つのメリット

ロープアクセス工法のメリットは以下の3つです。

  • 足場が要らない
  • 工事費用が安い
  • 作業場所を選ばない

ロープアクセス工法は、足場工法と比べてコストが安く小回りが利きます。

ロープアクセス工法を利用する3つのメリットを解説します。

メリット1.ロープアクセスは足場不要

ロープアクセス工法の1つ目のメリットは、足場が要らないことです。

足場を設置すると、営業に支障が出たり防犯面で不安だったりするため、商業施設など足場を作れない現場があります。

マンションや戸建てなどに足場を作る場合には、足場を利用した盗難・盗撮・住居への不法侵入を警戒しなければなりません。

一方で足場を設置しないロープアクセス工法は、景観を邪魔することなく防犯面でも安心・安全です。

さらに、足場の設置・解体には時間を要します。

足場の設置・解体作業そのものに加えて、足場を作るためには周辺の許可を得る必要があり、交渉期間によって工期が長引く可能性もあるでしょう。

しかし、ロープアクセス工法なら足場の設置・解体がないため、工期の短縮が可能です。

メリット2.柔軟性が高いロープアクセス

ロープアクセス工法の2つ目のメリットは柔軟性の高さです。

足場の設置には60㎝以上の幅が必要ですが、ロープアクセス工法なら40㎝ほどの隙間があれば作業できます。

隣家と距離が近く足場を組むのが困難な場所での外壁調査や漏水工事、川中に建つ橋梁などの目視点検にも対応。

ロープアクセス工法の機動力の高さを生かして、様々な環境下での作業を実現できます。

ポイント3.ロープアクセス工法で工費軽減

ロープアクセス工法の3つ目のメリットは、工事費用が安いことです。

足場は高く組むほどコストが掛かるため、大掛かりな仮設足場の設置などには高額なコストが必要になります。

高所や難所の作業には、橋梁点検車や高所作業車を手配しなければなりません。

しかし、ロープアクセス工法は、仮設足場・橋梁点検車・高所作業車などの手配が不要なため大幅なコスト削減が可能です。

劣化が進行している箇所だけの部分的な補修にも、迅速に対応できます。

補修工事ごとに足場を設置する必要がないため、工事費を安く抑えることが可能です。

なお、ロープアクセス工法の単価は「ロープアクセスの単価はいくら?外壁・屋根・看板補修の値段も徹底解説」に掲載しています。

ロープアクセス工法の2つのデメリット

ロープアクセス工法には、さまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。

ロープアクセス工法を利用するデメリットは以下の2つです。

  • 天候に左右される
  • 対応できる業者が限定的

ロープアクセス工法を選んで後悔しないためにも、デメリットを把握するのは大切です。

本章では、ロープアクセス工法の2つのデメリットを解説します。

1.天候に左右される

ロープアクセス工法は、大雨や強風の中では作業できません。

雨水で足が滑りやすく、強風にあおられる危険があるためです。

また屋根が三角形でロープ器具が設置できない建物も対応できない場合があります。

ロープアクセス工法で広範囲を作業するのは効率が悪く、仮設足場での作業より費用が高くなる可能性もあります。

環境や工事規模によっては、足場工法が適しているケースがあることは覚えておいてください。

2.対応できる業者が限定的

ロープアクセス工法は、専門知識・高度な技術・安全性の高い器具を持ち合わせてこそ安全性を確保できる工法です。

そのため、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署は平成28年7月1日から、ロープ高所作業従事者に対して特別教育を求めるようになりました。

詳しくは「「ロープ高所作業」での危険防止のため労働安全衛生規則を改正します」に掲載されており、学科4時間・実務3時間の特別教育の実施を制定しています。

同時に、使用するロープの強度についても規定が設けられ、ロープアクセス工法に従事する人が限定されたのです。

そのため、地域によってはロープアクセス工法を実施できる業者がいない場合も。

ロープアクセス工法による作業を検討する際は、対応地域を忘れずに確認しましょう。

ロープアクセス工法の対応業者選びの3つのポイント

ロープアクセス工法に対応している業者を選ぶときは、複数社を比較するのが前提です。

複数社の比較によって、質の低い業者の見極めにつながり、より適切な作業に期待できます。

本章では、ロープアクセス工法の対応業者を選ぶときの3つのポイントを解説します。

ポイント1.問い合わせの対応は丁寧か

電話やメールで問い合わせた際に、どれだけ丁寧に対応するかを比較します。

ロープアクセス工法は、足場工法と比較して低コストであるものの、決して安い金額ではありません。

そのため、作業計画や見積書を確認したときに、ふとした不安や疑問を覚えることもあるでしょう。

電話やメールが丁寧であれば、不安や疑問に対してもきちんと対応してくれることが期待されます。

安心して作業を任せられる業者を選ぶためにも、対応の丁寧さを確認するのが大切です。

ポイント2.実績の豊富さ

いかに緻密な作業計画を策定しても、必ず計画通りに作業が進むとは限りません。

「外壁点検だけの予定だったが、即時の修繕が必要だった」という場合も想定できます。

そして、豊富な経験・実績があれば、想定外の事態への対応力の高さに期待できるでしょう。

多くの現場を経験した作業員は、直面した事態に応じて迅速かつ的確な行動が可能。

ロープアクセス工法業者は、豊富な実績がある会社を選びましょう。

ポイント3.適正な価格か

ロープアクセス工法の適正価格は、規模や作業内容によって異なります。

たとえば屋根や外壁を塗装する場合は「ロープアクセスで外壁や屋根塗装は可能?基礎・手順・費用などを解説」に掲載しているように2,500円/㎡ですが、この金額もあくまで目安です。

適正価格を見極めるには、複数社の見積もりを比較して、平均値を割り出すのが最も確実。

明らかに高い・安い業者は控え、平均的な価格を提示した業者を選ぶのがポイントです。

同時に、見積書の内容を確認しましょう。

見積書に「作業一式」といった記載のみで、詳細が記載されていない場合は要注意です。

不必要な作業が入っていたり、使用する部材が高額だったりといったケースがあります。

見積書は、業者に随時確認しながら、価格と内容の適正さをチェックしてください。

ロープアクセス工法の対応業者をお探しの方へ

本記事では、ロープアクセス工法の基礎知識・メリット・デメリットを解説しました。

ロープアクセス工法は、仮設足場の設置が不要なため、低コストかつ短期間で建物をメンテナンスできます。

ロープに吊られながらの作業は危険に思えるかもしれませんが、高い安全性が認められている工法です。

ロープアクセス工法は、高所・難所・到達困難な場所にも自由自在にアクセスできます。

建物の点検・メンテナンスを検討している方は、ぜひロープアクセスを利用してみてください。

なお、当メディアを運営する株式会社ギアミクスは、公的施設・商業施設・マンションなど豊富な実績を持つロープアクセス工法を得意とする企業です。

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