BCP対策の一環として発電機の導入を検討する企業が増えています。
そこで本記事では、BCPに関する基礎知識とともに、発電機が求められる背景と種類について解説します。
災害発生時に、非常用発電機でどの機器を優先して動かすべきかについても、あわせて参考になさってください。
目次
【基礎知識】BCPに発電機が求められる背景とは?
はじめに、BCPに発電機が求められる背景について、下記3つの視点から解説します。
各項目について、さっそく見てみましょう。
1.BCPとは企業に必要な災害対策のこと
BCPとは「Business Continuity Plan」の略語で、企業が事故や災害に直面した場合に事業を継続させるための計画です。
内閣府の「事業継続ガイドライン 第一版」や中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」では、おもに下記の2つを目的として、事前準備をはじめとした計画策定が求められています。
- 人命を守り、資産への損害を最小限にとどめること
- 事業継続・事業の早期復旧を可能にすること
BCPが日本で急激に浸透したのは、2001年9月11日に発生したテロ攻撃がきっかけ。
その後、2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、BCPの大切さが明らかになりました。
自然災害が報じられることが多い昨今では、BCPの必要性がさらなる高まりを見せています。
2.災害発生時の電力供給としてBCPに発電機が求められる
災害発生時には、事業継続や復旧作業のために、電力の供給が必須です。
非常用発電機は、事業所や工場などの設備の稼働を可能にするほか、通信設備の稼働による効率的な復旧作業を可能にします。
さらに、非常用発電機の活用によって、情報リソースの損失を防ぐ・清潔保持などの効果にも期待できるでしょう。
よって、災害発生時の電力供給減として、非常用発電機は重要性が高い事項です。
BCPは、非常用発電機を考慮したうえで策定すべきです。
3.BCP発電機の導入に補助金が適用されるケースも
BCPを目的とした非常用発電機の導入には、自治体をはじめとした各機関からの補助金を活用できます。
たとえば、東京都中小企業振興公社の「BCP実践促進助成金」です。
BCP実践促進助成金は、自家用発電設備とその設置費用に対する補助金のこと。
令和5年1月11日~令和5年1月19日までの期間に受付できて、ERPやCRMなどの基幹システムについても対象になるのが特徴です。
好景気とは言えない状態が続いているものの、補助金を活用できれば、無理のない範囲で非常用発電機の導入が可能でしょう。
なお、非常用発電機の補助金については「非常用発電機の利用可能な補助金を紹介!令和3-4年度・5年度の情報も」で、さらに詳しく解説しています。
BCPに活用できる4種類の発電機とは?
BCPに活用できる発電機は以下の4種類です。
発電機ごとに、メリット・デメリットなどの特徴を解説しますので、自社に合う発電機を選ぶときの参考になさってください。
種類1.機種が豊富な「ディーゼル発電機」
ディーゼル発電機とは、ディーゼルエンジンを用いており、以前から広く活用されている発電機です。
燃料は軽油で、ディーゼルエンジンを稼働させて発電する仕組み。
ディーゼル発電機のメリットは、おもに以下の4つです。
- 大型・小型など、機種が豊富
- LPガス発電機と比較して省スペースで設置可能
- 発電効率が高い
- 燃料が安価で入手可能
続いて、デメリットを見てみましょう。
- 稼働時に排気ガスが生じる
- 稼働時に振動・騒音が生じる
- 燃料の備蓄が必要
- 燃料の貯蔵量によっては貯蔵設備が必要
ディーゼル発電機を動かす軽油の備蓄については、保管期限がある点にも注意が必要です。
石油連盟によると、軽油の補間期限はおよそ6ヶ月。
期限を超過した軽油は、酸化が進行して不完全燃焼の原因になります。
ディーゼル発電機は、燃料の定期的な確認と買い替えの手間とコストを含めて検討しましょう。
種類2.小型で持ち運び可能「ガソリンエンジン発電機」
ガソリンエンジン発電機とは、ガソリンを燃料としたエンジンを稼働させる発電機です。
小型なのが特徴で、8時間ほどの稼働ができるタイプは片手で持ち運べるほど軽量な発電機も販売されています。
ガソリンエンジン発電機のメリットは以下の通り。
- 小回りが利いて狭い場所でも使用可能
- 価格帯が広く、用途に応じたコストを算出しやすい
続いてデメリットです。
- 災害発生時は燃料の入手が困難
- 大規模タイプが販売されておらず、長時間の電力源として期待しにくい
なお、ガソリンや軽油は貯蔵量によって容器が異なるうえ、保管場所についても消防法で定められています。
詳しくは大阪府の「ガソリンや軽油の買いだめに関する防火安全上の注意事項」にわかりやすく掲載されています。
ディーゼルエンジン発電機やガソリンエンジン発電機を検討する場合は、事前に確認しておきましょう。
種類3.連続運転時間が長い「定置式LPガス発電機」
定置式LPガス発電機は、LPガスを燃料にした発電機です。
デメリットに対してメリットが多く、災害発生時の電力源として注目を集めています。
定置式LPガス発電機のメリットは以下の通り。
- 燃料の長期保存が可能
- 環境に優しい
- 連続運転時間が長く、災害発生時に活用しやすい
- 災害発生時に、燃料供給が途絶えにくい
続いてデメリットです。
- ガソリン・ディーゼルと比較すると燃費が悪い
- 製品のラインナップが限定的
一般社団法人全国LPガス協会の「LPガス業界における大規模災害の取組について」によると、LPガスは近年の大規模災害でも供給途絶・二次災害が発生していません。
よってLPガスを使用する発電機は、安全性の高い発電機といえるでしょう。
非常用発電機を対象とした補助金として、LPガス災害バルクの設置・発電機・空調設備の経費を対象にした「石油ガス災害バルク等の導入事業費補助金」があるのもポイントです。
LPガス発電機本体や必要機器を、低コストで導入できます。
種類4.低コストで導入可能「可搬式LPガス発電機」
可搬式LPガス発電機は、ガスボンベ(シリンダー容器)やガスを貯蔵する災害バルク貯槽から燃料を供給できる発電機です。
おもなメリット・デメリットは定置式LPガス発電機と同様ですが、可搬式LPガス発電機のほうが低コストで導入できて小回りが利くのが魅力。
ただし、屋内では使用できない点に注意が必要です。
発電機の稼働時には、一酸化炭素を含む排気ガスが生じます。
さらに、定置式LPガス発電機と比較すると発電量が少ないため、非常時に備えて稼働できる機器をリストアップしておく必要もあるでしょう。
LPガス発電機・太陽光発電・蓄電池のハイブリッド電源も注目される
近年では、LPガス発電機・太陽光発電・蓄電池を併用した非常用発電設備にも注目が集まっています。
発電設備の併用は、環境省が推進しているZEB化にも通じるものがあり、発電システムごとの長所と短所を互いにカバーできるためです。
複数の発電システムによって、長期間にわたる電力の安定供給に期待できるのもメリットです。
長ければ数週間にわたって電力を供給できるケースもあり、BCP対策として大きな可能性を秘めています。
BCPで必要な発電機、稼働時間の基準は72時間
非常用発電機は「72時間」が目安の1つです。
本章では、なぜ72時間が求められるのかについて解説します。
BCP発電機の72時間は内閣府が基準を設けている
内閣府が発表した「大規模災害時における地方公共団体の業務継続の手引き」には「72時間は外部からの供給なしで非常用電源を稼働可能とする措置が望ましい」という旨が記載されています。
そのためBCPは、72時間の電力供給が可能な計画にすべきでしょう。
しかし、なぜ72時間が基準となるのでしょうか。
その理由は、次章で解説します。
BCP発電機の72時間稼働は人命救助が目的
内閣府が72時間の基準を設けた理由は、おもに下記の2つです。
- 人間が食料・水がない状態で生き延びる限界は一般的に72時間
- 阪神淡路大震災では、72時間を超えると生存率が激減した
当初は72時間という基準は、医療分野に限られていたものの、つながりが深いこともあり非常用発電機にも当てはめられています。
72時間は人命をつなぐための時間と言い換えても過言ではなく、救助者の生存率を底上げするために設けられた時間です。
BCP発電機活用で優先すべき機器とは?
BCPの策定では、非常用発電機でどの機器を優先して動かすべきかが大切です。
本章では、非常用発電機で優先して動かすべき機器について解説します。
業種問わずに優先すべき「照明・通信機器・空調・エレベーター」
照明・通信機器・空調・エレベーターを優先して動かすメリットは下記の通りです。
- 照明:避難経路の安全性を視認できる
- 通信機器:取引先との連絡、外部との連携に活用できる
- 空調:低体温症・熱中症などを予防できる
- エレベーター:閉じ込められるリスクをなくし、車いすやベッドでの移動が可能
なお、エレベーターの稼働には大きな電力が必要です。
そのためBCP策定時には、どの程度の電力を割り当てるかについても検討しておきましょう。
病院・介護施設で優先する「医療機器・調理機器」
病院や介護施設では、吸引機・人工呼吸器・手術設備など、医療系機器を中心に電力を割り当てます。
機器によっては、単相100V・単相200Vといったように電力供給方法が異なりますので、その点についても事前に確認しておきましょう。
病院や介護施設の利用者は、炊き出し会場への移動が困難なケースが多いため、調理設備への電力供給も必要です。
コンロ・冷凍冷蔵設備などの稼働に必要な電力を計算し、十分な電力を確保できる非常用発電機を選ばなければなりません。
BCP発電機には定期メンテナンスが必須
本記事では、BCP策定に必須な非常用発電機について解説しました。
非常用発電機は、災害発生時の正常稼働のために、定期的な点検が必要です。
関連する法令や基準については「非常用発電機の負荷試験は6年に1度!点検する必要性や改正内容とは?」に掲載していますが、定期点検を実施しない場合は罰則もあります。
株式会社ギアミクスでは、非常用発電機の実負荷試験を行っております。
お見積りは無料ですので、非常用発電機の点検が必要な際は、ぜひお声がけください。