エレベーターは、集合住宅・商業施設・病院など、様々な建物で使用されています。
また、エレベーターは多くの人が利用していることもあり、安全確保を目的とした保守作業が求められています。
本記事では、エレベーターが故障する原因や対処法、予防策を解説します。
エレベーターが故障したときのよくある疑問も、あわせてご覧ください。
目次
エレベーターが故障する2つの原因とは?
エレベーターの安全を確保し、重大な被害を防止するには、故障の原因を知っておくことが大切です。
なぜなら、故障の原因把握により、適した予防策の考案につながるためです。
エレベーターが故障する原因をもとに、予防策の構築に役立てましょう。
原因1.部品の劣化
エレベーターは、大小さまざまな部品やオイルなどで構築されています。
部品は使用するほどに摩耗し、オイルは劣化するため、定期的な部品やオイルの交換は必須。
さらに、半導体をはじめとした電気的な部品に関しても、寿命を迎える前に交換しなければなりません。
部品やオイルが劣化する速度は、エレベーターの使用頻度や周囲の環境により異なります。
エレベーターの使用頻度や周囲の環境を考慮しながら、適したペースで点検や交換を実施しましょう。
原因2.雨漏りによる水濡れ
木造・鉄筋コンクリート造など、どのような建物でも雨漏りが発生するリスクがあります。
たとえば、鉄筋コンクリート造の建物では、コンクリートのひび割れ防止のためのシーリング材が劣化すると雨漏りにつながるケースも。
エレベーターには電気部品が多く使用されており、水濡れが故障につながるほか、ワイヤーや巻上機などサビに警戒すべき部品もあります。
したがって、雨漏りによる水濡れはエレベーターの故障の原因となり得ます。
なお、ビルの雨漏りの詳細は「ビルで雨漏りが発生する原因とは?調査・応急処置の方法も解説」をご覧ください。
エレベーターが故障したときの対処法
エレベーターの故障に対して、冷静かつ迅速に対処するには、対処法を把握することが大切です。
本章では、エレベーターが故障したときの対処法を解説します。
エレベーター故障時の対処法をもとに、対応をシミュレートしておきましょう。
1.エレベーターの外にいるとき
エレベーターの故障を発見したときは、下記の手順に沿って対応してください。
- エレベーターに乗っている人の有無を確認
- エレベーターのメンテナンス業者に連絡
- 封鎖してエレベーターに人が乗らないようにする
- エレベーターの修理・回復を待つ
故障したエレベーターに人が乗っているときは、メンテナンス業者に連絡することや落ち着くように伝えるほか、可能であれば修理完了までの進捗を教えると良いでしょう。
施設管理者は、エレベーターに閉じ込められた人の安全を最優先し、修理や救助はメンテナンス業者に一任してください。
2.エレベーターに閉じ込められたとき
エレベーターの故障によって閉じ込められたときは、パニックにならずに落ち着くことが大切です。
同乗者がいる場合は、落ち着くように声をかけてあげましょう。
エレベーターに閉じ込められたときは、下記の2つにそって行動してください。
- ほかの階のボタンを押してみる:特定の階のボタンが故障している場合があるため、ほかの階のボタンを押してみる。すべての階のボタンを押しても動かない場合は次の行動に移る。
- 非常用インターホンを押す:外部から応答があるまで非常用インターホンを押し続ける。外部と連絡がとれない場合は、エレベーター内に記載されている連絡先に電話する。それでもつながらない・体調不良者がいる、などの場合は119番通報も視野に入れて行動する。
地震や洪水など、救助までに時間を要することが予測できる場合は、エレベーター内の非常用グッズを確認します。
非常用グッズは、エレベーターによって搭載されていない場合もありますが、搭載されていれば救助を待つ間に活用できます。
3.エレベーターが故障したときにやってはいけないこと
エレベーターが故障したときに、下記の2つの行動は起こしてはいけません。
- エレベーターの扉をこじ開ける:エレベーターの故障個所が回復しても再稼働できなくなるリスクがある。ドアのすき間からの転落やはさまり事故につながるリスクがある。
- 天井からの脱出:そもそもエレベーター天井のふたは施錠されていて開かない。天井のふたが開いた場合も、転落事故につながる可能性が高い。
映画で上記のような光景を見た記憶がある人がいるかもしれませんが、いずれの場合も重大な事故につながる可能性が高く現実的な行動ではありません。
大規模な地震や災害が発生した状況でない限り、エレベーターの復旧にかかる時間は数分~数十分が一般的です。
エレベーターが故障したときは落ち着いて救助を待つのが安全です。
エレベーター故障の3つの予防策
「エレベーター故障の予防策を検討したが、なかなか具体化できない」という人もいるのではないでしょうか。
本章では、エレベーター故障の3つの予防策を解説します。
本章の内容をもとに、エレベーターの状況や周囲の環境に合わせた予防策を検討しましょう。
予防策1.自主点検の定期的な実施
エレベーターには、法定点検と自主点検の2種類があります。
法定点検と自主点検の詳細は以下の通りです。
- 法定点検:1年に1度の実施が義務。点検結果は特定行政庁に報告しなければならない。(参照:国土交通省 昇降機(エレベーター、エスカレーター等)について)
- 自主点検:国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」により、使用頻度に応じた定期的な点検の実施が望ましいと記載される。1ヶ月に1度の頻度で実施するのが一般的。
定期的な点検により、エレベーターの異常の早期発見につながるため、故障のリスク軽減に期待できます。
ただし、法定点検や自主点検が形だけのものにならないよう注意が必要です。
エレベーターの故障や事故は、人命に直結する可能性があることを意識して点検を実施しましょう。
エレベーターの故障を予防するには、電気部品の故障やサビの防止につながる定期的な雨漏り調査の実施も有効です。
雨漏り調査の詳細は「雨漏り調査会社とは?調査方法・費用目安・選び方のポイントを解説」をご覧ください。
予防策2.細かな異常発生を見逃さない
エレベーターの故障を予防するには、管理者や社員が実際に乗って異常の有無を確認するのも有効です。
エレベーターが故障するときの、おもな初期症状は下記の4つです。
- 異音・異臭・異振動
- 目的の階に到着しても扉が開かない(開くまでに時間がかかる)
- エレベーターが昇降する速度が低下
- 到着時にエレベーターの床と建物の床の間に段差がある
エレベーターの細かな以上を発見するには、定期的な点検に頼り切らずに、普段から異常の有無を確認しようと意識することが大切。
細かな異常であっても、すぐにメンテナンス業者に連絡し、点検や修理を依頼しましょう。
予防策3.耐用年数を迎える前にリニューアル
エレベーターの耐用年数は、以下の3つがおもな目安です。
- 法定耐用年数:税法上の固定資産価値を表した年数。国税庁は17年と定めている。(参照:別添3 法定耐用年数(国税庁))
- 長期修繕計画ガイドライン:マンションの長期的な修繕工事計画。国土交通省は15年目で修繕・30年目で交換と定めている。(参照:国土交通省 既設エレベーターの現状と課題について(案))
- 各エレベーターメーカー:20~25年。
耐用年数は最短で国税庁が定めた17年、最長で国土交通省の30年ですが、20~25年を目安にリニューアルするのが一般的です。
耐用年数を超えての使用は、エレベーター製造メーカーが部品供給を停止する場合もあり、故障や事故のリスクが高まるのは明白。
耐用年数が近づいたときは、早めのリニューアルの計画・実施が安全の確保につながります。
エレベーターが故障したときのよくある疑問
エレベーターが故障したときは、さまざまな不安が襲うでしょう。
しかし、エレベーターが故障しても、多くの人が想像するような危険性はさほど高くありません。
本章では、エレベーター故障時の不安解消につながるよくある疑問を解決します。
1.エレベーターが落下する可能性は限りなく低い
エレベーターが故障したときは緊急用のブレーキが稼働するため、落下するリスクはほとんどありません。
緊急用のブレーキが稼働しなかった場合も安心です。
なぜなら、最下部には落下したエレベーターが床に直撃するのを防止して衝撃を吸収する緩衝器が搭載されているため。
エレベーターには、落下防止を目的とした複数の安全機能が搭載されている点を理解し、故障時の落ち着いた対応に努めましょう。
2.ロープが切れてもエレベーターの安全性は保たれる
一般的なエレベーターは3本のロープで支えられており、一部のロープが切れても安全性が保たれます。
またエレベーターのロープは、1本でも問題なく荷重を支えられるよう設計された頑丈なものが使用されています。
万が一、エレベーターのロープがすべて切れたと仮定しても、緊急ブレーキに加えて落下緩衝器があるため安心です。
3.尿や便は場所を決めて排泄
エレベーターの中には、簡易トイレや飲料水などの非常用グッズを搭載したモデルもあります。
そのため、エレベーターに閉じ込められて尿意・便意を感じた際は非常用グッズの有無を確認すると良いでしょう。
非常用グッズがなかった場合は、ビニール袋のように防水性の高い入れ物がないかを確認し、あればその中に用を足してください。
排泄物の入れ物がない場合は、周囲の人に了解を取り、場所を決めて排泄します。
排泄場所を決めることで、人体に悪影響を及ぼす可能性のある細菌の発生場所を限定でき、健康被害の防止に効果的です。
理想的なのは、携帯トイレをバッグやカバンなどの中に常備すること。
普段から備えることで、緊急時のトイレも安心してできます。
定期的な点検・メンテナンスでエレベーターの安全を確保しよう
本記事では、エレベーターが故障する原因・対処法・予防策などを解説しました。
エレベーターは、点検やメンテナンスを定期的に実施していても故障を完全に防止できる訳ではありません。
しかし、定期的な点検やメンテナンスが故障防止につながるのもまた事実。
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