「非常用発電機の容量の目安はどれくらい必要なのか」と悩んでいないでしょうか?
非常用発電機は、火災や地震などの災害発生時の電力供給になくてはならない備えです。
今回は非常用発電機の容量の目安について解説します。
万が一に備えた、十分な容量の非常用発電機を検討する際にお役立てください。
目次
法令から分かる非常用発電機の容量の目安
もしも電力会社からの電力供給が途絶えたとき、法令上必要な非常用発電機の容量はどれくらいなのでしょうか。
今回紹介する法令は以下の3つです。
- 電気設備技術基準
- 消防法
- 建築基準法
法令を読み解けば、実際にどれくらいの容量が非常用発電機に必要なのかが見えてきます。
非常用発電機は電気設備技術基準では「保安用」にあたる
電気設備基準とは、一般的に見て守らなければならない技術的な事項を記した法令です。
電気基準法に基づいて制定されている法令の1つであり、行政官庁における審査基準として知られています。
電気設備基準において、非常用電源は避難や消火活動に電力を使用するシーンは含まれておりません。
あくまで業務の継続や保安用として位置づけられています。
非常用発電機の具体的な運転時間についての記載はありません。
非常用発電機は消防法では「非常電源」にあたる
消防法とは、火災の予防や火災発生時の速やかな鎮火を目的とした法令です。
消防法では消防設備の点検がイメージされがちですが、非常用電源についても具体的に記載されています。
消防法において、非常用電源はその名の通り、非常電源として稼働する必要があります。
具体的には、消火栓・スプリンクラー・消防排煙設備に対する非常時の電気供給です。
さらに、消防法では消防設備に供給しなければならない時間・燃料が定められています。
詳細については以下の通りです。
- 定格負荷で60分以上連続運転できること
- 燃料油は2時間以上の容量であること
- 40秒以内に電圧確率できること
定格負荷は設置している消防設備によって差があるため、定格負荷について確認しながら非常用電源を選定しましょう。
非常用発電機は建築基準法で「予備電源」にあたる
建築基準法とは、建物を建築するときに守るべき最低限のルールを定めた法律です。
安全・安心な生活を目的としているため、非常用発電機についての記載があります。
建築基準法において非常用発電機は、非常用照明や排煙機の電源に使用される予備電源として位置づけられます。
消防法における非常用発電機の位置づけと似ていますが、建築基準法では明確な運転時間の基準がある点が違いです。
建築基準法は非常用発電機に対して求めている事項は以下の通り。
- 防災設備に30分以上の電力供給ができること
- 30分以上の連続運転ができる容量を持つこと
- 40秒以内に電圧確率ができること
消防法における非常用発電機と併用する場合は、消防法と建築基準法の双方の条件を満たす機種選定がポイントになります。
消防法と建築基準法が非常用発電機に求める事項が、若干違っている点に注意しましょう。
非常用発電機は2種類ある
非常用発電機を防災設備として使用する場合、消防法によって「ディーゼル」か「ガスタービン」もしくは同等以上の性能を有するものと定められています。
そのためディーゼルかガスタービンのどちらかを非常用発電機として使用するケースがほとんどです。
ディーゼルとガスタービンにはそれぞれにメリットとデメリットがあり、設置する環境に合わせて選ぶ必要があります。
ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機とは?
ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機についての詳細をお伝えします。
メリットや注意点などを参考に、設置する環境の条件に合っているかを確認しましょう。
同時に、容量計算方式を解説しますので、あわせてご参考ください。
安定出力の安心感がメリット
ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機は20~1,000kva以上と幅広くラインナップされているのが特徴です。
ガスタービンを用いた非常用発電機と比較して低コストで設置でき、主流として用いられています。
発電する仕組みはです。
燃料の爆発エネル自動車のエンジンと似た仕組みギーを利用してピストンを動かし、クランク軸で回転運動に変えて発電します。
燃料の温度や気温の影響を受けにくく、一定の出力を保てる堅牢な非常用発電機です。
長時間の軽負荷運転に注意
ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機は、軽負荷運転時に燃料をうまく燃焼できず、黒煙増加・排気管からのオイル漏れなどが発生します。
ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機の軽負荷運転は、ちょうど自動車がエンストしそうな状態のようなものです。
例えばマニュアルの自動車を運転するとき、2・3速を飛ばし、1速から4速に入れたとしましょう。
すると、エンストはしないものの、今にもエンストしそうな微振動が発生します。
ギアが対応できる未満の力を必要とされるため、エンジンに負担がかかっている状態です。
ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機にも似たような現象が発生し、結果的にデメリットを増長させてしまうため注意を要します。
ディーゼルエンジン非常用発電機の容量計算方式
ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機の燃料タンクは、Q=b×E×H/wの計算式で容量を算出します。
計算に使用される記号の意味と単位は以下の通りです。
- Q:燃料必要量(L)
- b:燃料消費量(g/kW・h)
- E:原動機出力(kW)
- H:運転時間(h)
- w:燃料密度(g/L)
燃料密度は、軽油とA重油(燃料として使用される重質の石油製品)で異なります。
軽油は830g/L、A重油は850g/Lです。
続いて、原動機出力ごとの燃料消費量は以下の通り。
- 22kW以下:310g/kWh
- 22kW超え~184kW以下:300g/kWh
- 184kW超え~331kW以下:270g/kWh
- 331kW超え~552kW以下:250g/kWh
- 552kW超え:230g/kWh
ガスタービンを用いた非常用発電機とは?
ガスタービンを使用した非常用発電機の詳細についてお伝えします。
ガスタービンを使用した非常用発電機は、小中規模の建物用途として使用されるケースが多いのが特徴です。
建物の規模も考慮しながら、非常用発電機選びにお役立てください。
コンパクト&騒音の低さがメリット
ガスタービンを用いた非常用電源は、燃料と多量の空気を混合させて燃焼したエネルギーを回転運動に利用します。
エンジンのピストンを必要とせず、回転機構のみで成り立つため、ディーゼルエンジンを用いた非常用発電機と比較してコンパクトなのが特徴です。
ガスタービンはクリーンで環境に優しいのも特徴の1つ。
例えば家庭で使用されているガスコンロを想像してみてください。
ガスコンロに火をつけても、煙はほとんど出ません。
ガスタービンと同様に、燃料のガスと多量の空気を混合させて完全燃焼できるためです。
さらにガスタービンは、ディーゼルエンジンのように燃料を「爆発」させるのでなく「燃やす」ため、軽負荷運動のような微調整が必要なシーンも活躍できます。
騒音も小さく、建築躯体に伝わる振動が少ないというメリットもあります。
非常用電源の価格と燃費の悪さがデメリット
ガスタービンを用いた非常用発電機は、ディーゼルエンジンと比較して、2倍以上の燃料が必要です。
さらに機器本体が高価であり、吸排気設備が大きい点にも注意が必要です。
特に吸排気設備の大きさは建設的な制約が大きくなるため、設計する上でも検討しなければなりません。
しかし、本体が小型で安定した出力があり、調整がしやすいのは使いやすさに直結するポイントです。
小型の非常用発電機を必要とする場合は、ガスタービンを用いた非常用発電機が使いやすいでしょう。
ガスタービンを用いた非常用発電機の容量計算方式
ガスタービンを用いた非常用発電機もディーゼルエンジンの場合と同様の計算式である、Q=b×E×H/wによって算出されます。
計算に使用される記号の意味と単位も以下の通り同様です。
- Q:燃料必要量(L)
- b:燃料消費量(g/kW・h)
- E:原動機出力(kW)
- H:運転時間(h)
- w:燃料密度(g/L)
続いて、原動機出力ごとの燃料消費量は以下の通り。
- 22kW超え~184kW以下:680g/kWh
- 184kW超え~331kW以下:660g/kWh
- 331kW超え~552kW以下:590g/kWh
- 552kW超え:520g/kWh
非常用発電機の導入で役立つ3つのポイント
非常用発電機を導入する際に役立つ3つのポイントを解説します。
今後、非常用発電機を設置する環境と比較してみてください。
きっと十分な性能の非常用発電機を選べます。
非常用発電機導入のポイント1.必要電力を測定
消防法や建築基準法に基づき、要件を満たすためにはどの程度の電力を必要とするのかを測定します。
特に注意すべきは、非常用発電機の容量が必要電力に満たないケースです。
設置のコストを気にして、容量がギリギリの非常用発電機を設置した場合、万が一の際に活用できないリスクが想定されます。
災害時に必要な電力の測定後は、容量に余裕のある非常用発電機を選びましょう。
非常用発電機導入のポイント2.設置場所の検討
ディーゼルエンジンを利用した非常用発電機を設置する場合、使用時は黒煙や振動が周囲の迷惑にならないかに気を付けなければなりません。
ガスタービンの場合は吸排気設備のために改築した結果、建物の強度が不足するリスクも考えられます。
周囲に与える影響を考慮しながら設置場所を検討しましょう。
非常用発電機導入のポイント3.取得方法を検討
非常用発電機の法定耐用年数は、税法上は15年、国土交通省営繕の基準では30年です。
どちらの基準に合わせるのかによって、レンタルするか購入するかを検討しましょう。
どちらの場合でも、定期的なメンテナンスが必要ですが、ランニングコストに大きな差が出ます。
耐用年数や捻出可能なコストに合わせて選んでください。
非常用電源は容量オーバーに気を付けて導入しよう
今回お伝えした内容は以下の通りです。
- 非常用発電機の容量の目安
- 非常用発電機の種類と特徴
- 非常用発電機を導入する際のポイント
非常用発電機は、いざという時に動かなければ本末転倒です。
容量には余裕を持って準備して、災害に備えましょう。
株式会社ギアミクスでは、キュービクル工事や非常用発電機の負荷試験を請け負っております。
非常用発電機についてお悩みの方は、ギアミクスにお気軽にお問合せください。