エレベーターの保守点検は、利用者の安全を保障するために欠かさずに実施しなければなりません。
しかし、エレベーターの保守点検には費用が発生するため、マンションやビルなどの管理費への影響も小さいものではありません。
本記事では、エレベーターの保守点検の基礎知識・契約形態別の費用相場・コスト削減のポイントを解説します。
エレベーター保守点検業者を選ぶ時の注意点も、あわせてご覧ください。
目次
エレベーターの保守点検とは?
本章では、エレベーターの保守点検の基礎知識を解説します。
まずは基礎を理解し、適正な保守点検の実施に備えてください。
1.保守点検は行政への報告は不要
エレベーターの点検は法定点検と保守点検の2種類があり、それぞれの詳細は以下の通りです。
- 法定点検:年に1度の点検。点検の実施と特定行政庁への報告が義務化されている。(参照:国土交通省 昇降機(エレベーター、エスカレーター等)について)
- 保守点検:使用頻度に応じた定期的な点検の実施が望ましい。特定行政庁への報告は不要。(参照:国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」)
保守点検に必要な資格はありませんが、エレベーターの仕組みや電気・機械関連の知識が必要なため、専門業者に依頼するのが一般的です。
なお、特定行政庁への報告が必要な法定点検は、昇降機等検査員・2級建築士などの有資格者が必要です。
2.使用頻度に合わせて1~3ヶ月ごとに実施
使用頻度によって、3ヶ月に1回というケースもありますが、基本的には1ヶ月に1回のペースで実施すると安心です。
なぜなら、エレベーターは雨漏りによる水濡れが原因となって故障する可能性があるため。
オイルや部品の多くは、繰り返し使用することで摩耗し、交換が必要になります。
しかし、雨漏りがある状況下では、電気部品のショートや金属部品のサビなどのリスクが高まるのは明白です。
エレベーターは1ヶ月に1度の保守点検を実施するほか、必要に応じて雨漏りの有無を点検すると安全性の確保に効果的です。
参考記事:ビルで雨漏りが発生する原因とは?調査・応急処置の方法も解説
契約形態別のエレベーター保守点検費用の相場
エレベーターの保守点検契約は、2種類の形態があります。
本章では、保守点検費用を契約形態別に解説します。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえて検討を進めましょう。
1.保守のみを実施する「POG契約」
POG(Parts・Oil・Grease)契約とは、エレベーターの清掃・点検・オイル補給・消耗品の交換を実施する契約形態で、1~5万円/月ほどが費用相場です。
POG契約は、最低限の内容となっており、コストを抑えやすいのがメリット。
一方で、部品交換や修繕が発生するたびに費用がかかる点や、高額部品が必要になる場合は別契約になるケースがある点がデメリットです。
POG契約は、設置から年数が経過するほどに部品交換・修繕などが必要になることを考慮して検討しましょう。
2.部品代・修理費用が含まれる「フルメンテナンス契約」
フルメンテナンス契約とは、エレベーターの清掃・点検・オイル補給・消耗品の交換に加えて、都度発生する部品交換・修理代金も含めた契約形態で2~6万円/月が費用相場です。
フルメンテナンス契約のメリットは、コスト算出が容易・追加料金の心配がない・保守業務の計画から実施まで一任できるなど。
ただし、POG契約と比較して割高になる点や、天災・火災・いたずらによる破損などは契約外になる場合がある点に注意が必要です。
3.契約形態はエレベーター周囲の環境や使用頻度をもとに検討
POG契約とフルメンテナンス契約、それぞれが適したケースを比較してみましょう。
- POG契約:築浅・使用頻度が低いなど、部品交換や修繕の必要性が薄い場合に適している。
- フルメンテナンス契約:築年数が古い建物・使用頻度が高い・複数のマンションやビルの経営者など、部品交換や修繕の必要性が高い場合や、効率的な管理を要する場合などに適している。
上記のように、POG契約とフルメンテナンス契約が適したケースは、使用頻度や使用期間などによって左右されます。
さらに、海が近くて砂がつまりやすいといった環境的な要因が故障につながる可能性もあるでしょう。
エレベーターの保守点検の契約形態は、使用頻度・使用期間・周囲の環境などをもとに検討してください。
エレベーター保守点検の費用を抑える3つのポイント
エレベーターの保守点検は、安全を守るために必須です。
しかし、昨今では物価高の影響もあり、費用を抑えたいと考える人も多いのではないでしょうか。
本章では、エレベーターの保守点検の費用を抑える3つのポイントを解説します。
ポイント1.相見積もりで比較
エレベーターの保守点検依頼先は、最低でも2~3社の見積もりを取得・比較しましょう。
相見積もりで比較することで、コスト削減につながるほか、適正価格の調査もできます。
各社からの見積もりを取得する際は、それぞれの特徴をメモしておくのも大切です。
金額と特徴を同時に比較することで、よりスムーズな検討に期待できます。
ポイント2.リモート対応の業者を選択
以前はエレベーターを一定時間停止させ、手作業で点検する有人点検が主流でした。
しかし、近年ではリモート(無人・遠隔)点検に対応したエレベーターや業者が増加しています。
リモート点検のメリットは、派遣する人件費を削減できたことによる低価格を実現できていること。
エレベーターを停止させる時間も減少できるため、利用者への影響も抑えられます。
ポイント3.独立系のメンテナンス業者への依頼を検討
エレベーターのメンテナンス業者は、メーカー系と独立系の2種類に大別され、それぞれの特徴は以下の通りです。
- メーカー系:株式会社東芝・三菱電機株式会社などのエレベーターメーカー系列のメンテナンス業者。信用度が高く部品調達力に期待できる反面、保守料金が割高な傾向にある。
- 独立系:エレベーターメーカーに属さないメンテナンス業者。保守料金が安い・対応可能なメーカーが多いなどがメリット。デメリットとして、信頼できる業者探しに労力を要する・部品調達に時間がかかる場合があるなどがある。
費用面を考えた際は、独立系に依頼することでコストカットにつながります。
ただし、緊急性がある場合は部品調達力が高いメーカー系が有利な場合がある点に要注意。
エレベーター保守点検の依頼先は、さまざまな視点から検討して決定してください。
エレベーター保守点検の業者の選ぶときの4つの注意点
エレベーターの故障や事故の防止は、場合によっては人命にも関わる重要なものです。
そのため、エレベーター保守点検を依頼する業者も慎重に選ばなければなりません。
本章では、エレベーター保守点検業者選びの4つの注意点を解説します。
注意点1.国土交通省のチェック項目を満たす業者を選ぶ
国土交通省は「昇降機の適切な維持管理に関する指針」の中で、保守点検業者の選定時の留意事項をチェックリスト形式で掲載しています。
チェックリストには、以下のような内容が掲載されています。
- 業務仕様書の有無
- 業務担当者の能力
- 業者の教育体制・技術情報・部品調達力
- など
上記のほか、緊急通報から現場までの到達目標時間の記載があるか、といった内容も。
各項目のチェックにより、保守点検の依頼に適した業者かどうかが判明します。
業者を比較検討する際は、見積もりを取得するとともに国土交通省のチェックリストも活用しましょう。
注意点2.エレベーター保守点検の契約書を確認
エレベーター保守点検の契約書で重点的に確認するのは以下2つの項目です。
- 契約書に添付される仕様書:必要な点検・修繕などが適した周期で実施されるかを確認。特に、点検項目表や取替え・修理の範囲など、自社が必要としている部分を網羅できるかを確認する。
- エレベーター保守点検の費用と支払い方法:費用は月額制が一般的。金額が見積書と違っていないか、支払い方法が希望と合致しているかなどを確認する。
契約書そのものに不安を感じる場合は、国土交通省が公開している「エレベーター保守・点検業務標準契約書」を参考にしましょう。
国土交通省が策定した標準契約書は、POG契約・フルメンテナンス契約のどちらにも利用できる内容です。
そのため、国土交通省が策定した標準契約書と業者の契約書を比較して、大きな差異がないかを確認できれば安心です。
注意点3.保守点検契約の有効期間・更新条件をチェック
国土交通省の標準契約書では「委託者又は受託者は、その相手方に対して、本契約の有効期間が満了する日の少なくとも90日前に書面をもって解約の申入れを行わない限り、当該有効期間が満了する日の翌日より更に一年間自動更新されるものとし、以後も同様とする。」(引用:「エレベーター保守・点検業務標準契約書」)と記載されています。
多くのメンテナンス業者が国土交通省の標準契約書を参考にしていると想定できるものの、契約の有効期限や更新条件を把握していない場合は、思わぬトラブルの原因になる可能性があります。
そのため、保守点検契約の有効期間や更新条件を確認し、把握することが大切です。
注意点4.緊急時の対応が十分かを検討
エレベーターは、突発的な故障が発生する可能性があります。
そのため、24時間365日体制の緊急対応はメンテナンス業者選びの必須条件と言って良いでしょう。
さらに、緊急通報から現場到着に要する時間や連絡体制なども確認し、万が一の備えとして十分なものかどうかを確認してください。
エレベーターの安全を保守点検で維持しよう
本記事では、エレベーター保守点検の基礎知識・費用相場・コストカットのポイントなどを解説しました。
エレベーターは商業施設・集合住宅・病院など、多くの建物に設置されており、不特定多数が利用しています。
そのため、定期的な保守点検による安全確保が欠かせません。
当メディアを運営する株式会社ギアミクスでは、全メーカー対応のエレベーター保守点検を請け負っております。
拠点には各メーカーの部品を保管しており、万が一の故障にも速やかに対応致します。
エレベーターの保守点検でお悩みの方は、ぜひご相談ください。