キュービクル(トランス)の交換時期はいつ?補助金やメリットも解説

キュービクル(トランス)の交換時期はいつ?補助金やメリットも解説

キュービクルは、多くの電力を使用している工場や商業施設などに設置されています。

キュービクルや部品である変圧器(トランス)の耐用年数が経過すると、経年劣化で事故が起こったり、余分に電力を消耗したりするかもしれません。

本記事では、キュービクル・トランスの交換時期や注意点、交換に活用できる補助金を紹介します。

省エネ対策にお悩みの担当者や経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

キュービクル・トランスとは?

キュービクルやトランスの役割・構造について解説します。

キュービクルとは

商業施設やビルの屋上や駐車場に設置されている金属性の外箱を見たことありませんか。

キュービクルの正式名称は、「キュービクル式高圧受電設備」といいます。

高電圧を日常生活で利用できる電圧に降圧する受電設備です。
日常生活で利用する施設に設置されている小規模変電所ともいえます。

キュービクルは、変圧器・区分開閉器・断路器・遮断器・保護継電器・制御装置・計測機器・低圧配電設備で構成されているのが一般的です。

トランスの役割

トランスは、電圧の昇圧・降圧の役目を自由自在に果たす変圧器です。

発電所から変電所を通して供給される6,600ボルトの電気を、ビルや住宅などで使用できる100ボルトや200ボルトに降圧します。

6,600ボルトの高電圧を受電している工場や商業施設の場合、キュービクルの内部に設置されることが多いです。

トランスの構造

トランスは、鉄心にコイルを巻きつけた構造です。

電流が流れることでコイル内に磁界が生じて、電圧が発生します。

理科の実験で習った、コイルを巻きつけて磁石を使うと電気が発生するのと同じ仕組みです。

しかし、高電圧に関する資格を持たない普通の人が取り扱うのは大変危険といえます。

トランスの寿命

トランスの寿命は、一般的に8〜15年といわれています。

法定耐用年数はあくまでも目安であり、必要なメンテナンスをきちんと実施していれば、法定耐用年数を超えて使用し続けることもある程度は可能です。

ただし、高電圧の電気が常に流れている部分のため、漏電や爆発事故など取り返しのつかない事故が起こらないように気を付けなければなりません。

キュービクルの交換時期はいつなのか?

キュービクル交換時期の目安や交換にかかる日数、メンテナンスについて紹介します。

キュービクル交換時期の目安

キュービクル本体の交換時期は、部品の耐用年数でもある15年が目安といわれています。

耐用年数を超えての使用は、電力の余計な消費・コストがかかるだけでなく、キュービクル本体の故障や事故の原因の1つです。

波及事故などを未然に防ぎ、省エネ効果を期待するためにも、定期的にキュービクル本体を交換しましょう。

キュービクル交換にかかる期間

元々設置されているキュービクルと同じサイズに交換する場合は、コンクリート打設が必要ないため、1〜3日で完了です。

電力容量の変更に伴いサイズが異なるキュービクルに交換するなら、コンクリートの打設から設置までの全工事におよそ1週間かかります。

また、設置日の半日は停電となるので注意してください。

設置場所や依頼する業者によって期間は異なるため、事前確認をおすすめします。

キュービクルの保安点検・メンテナンスは必須

キュービクルは、きちんと整備しないと波及事故を起こす可能性があるため、メンテナンスが欠かせません。

法令によりキュービクルの設置後は、電気主任技術者が年次点検と月次点検を実施して、事業者へ報告する必要があります。

第三十九条 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない。

引用:電気事業法

メンテナンス費用は業者により異なりますが、月額5〜10万円ほどが相場価格です。

※キュービクルの保安点検に関してさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
キュービクルは保安点検が義務!点検内容や法律、費用などを解説

キュービクル電力容量を増設するための交換方法

商業施設や事業所などでは、中に入っている店舗が変わることで必要とされる電気容量も変わります。

キュービクル内のトランスには容量が決められており、現状のキュービクルの容量では対応できないかもしれません。

キュービクルの容量を増設・変更する主な交換方法は以下の3つです。

  • 古いキュービクルを残したまま増設する
  • 新しいキュービクルに交換する
  • キュービクルはそのままでトランスだけを交換する

キュービクルの本体は、どれだけ小規模でも数百万円はかかってしまいます。

電気容量を増やしたいが交換費用で諦めていた方は、トランスだけを変更するのがおすすめです。

キュービクルの本体を交換せずとも、トランス交換により容量を増やすことで、 電気容量を増やせます。

中古のトランスを販売している業者もあり、より費用負担を抑えたいなら調べましょう。

キュービクルの容量に関しての知識をより知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
キュービクルの容量を決める方法とは?基礎知識をわかりやすく解説

トランスのみを交換するメリット

トランスのみを交換する一番のメリットは、交換費用を安く抑えられることです。

キュービクル本体を交換したい場合、本体価格と設置費用がかかります。

キュービクルの本体価格の目安は以下の通りです。

  • 100kw(小規模施設やコンビニ):200万円前後
  • 200kw(中規模施設や小規模工場):350~450万円
  • 300kw(中規模工場やスーパー):550~650万円
  • 500kw(製造工場や病院):1,000~1,200万円

トランスのみの交換工事なら、50万円前後〜できます。

さらにトランスの交換だけなら、簡単な作業で済む場合がほとんどです。

数人程度の作業員が短時間で完了してくれます。

ただし、トランスの容量によって大きく工事時間が変わり、半日は停電となるため注意してください。

トランスを交換する際に注意したい3つのポイント

トランスを交換する際に注意したいポイントは以下の3つです。

  • トランスの搬入経路の確認
  • 設置スペースの確認
  • PCBの確認

トランスの交換を円滑に行うためにも、それぞれのポイントを順にチェックしましょう。

トランスの搬入経路の確認

トランスを交換する際に注意したいポイントの1つ目は、トランスの搬入経路の確認です。

トランスは非常に重い設備で、小さいサイズで100㎏、大きいサイズだと数トンの重量にもなります。

スムーズに運搬するためにも、事前に搬入経路を確認しましょう。

設置スペースの確認

トランスを交換する際に注意したいポイントの2つ目は、既設キュービクル内に設置スペースを確保できるかどうか確認することです。

キュービクルの中に交換したいトランスがきちんと収まらなければ、変更できません。

現在使用しているキュービクル内に設置スペースがなければ、サブのキュービクルをもう1基増やす必要があるので注意しましょう。

PCBの確認

トランスを交換する際に注意したいポイントの3つ目は、既設トランスにPCBが使用されているかどうかです。

PCBとは「Poly Chlorinated Biphenyl」の略称で、ポリ塩化ビフェニル化合物と呼ばれる人工的に作られた油状の化学物質を指します。

昔は国内でも変圧器やコンデンサー、安定器に利用されていましたが、1970年頃に有毒性があると判明し製造や輸出入が日本で禁止になりました。

1973年以降に製造されたキュービクルにPCBが使用されている可能性は低いです。
しかし、低濃度のPCBが部品によって含まれている可能性も否定できません。

PCBの処理を推進するために、環境省も取り組みを始めています。

平成13年6月22日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB 特措法)が公布され、同年7月15日から施行されました。

PCB廃棄物は期限内に処分しないと罰則の対象になるので、処分については環境省のホームページを確認しましょう。

キュービクル・トランスの交換に補助金を活用できるのか?

キュービクル自体の補助金はありません。

しかし、トップランナー基準を満たす高効率変圧器に交換する場合、トランスは補助金の対象となります。

トップランナー基準とは、近年深刻化している環境問題を解決するために国が定めた基準のことです。

高効率変圧器に交換することで、電力損失を減らし、省エネ・省CO2化が可能なため、経済産業省や環境省の補助金制度の利用ができます。

トランスの交換に活用できる代表的な補助金制度は以下の通りです。

  • 工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(環境省)
  • 先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金(経済産業省)

工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(環境省)は、トランス以外にもさまざまな設備が対象となり、工場や事業場内の省エネ率によって補助金額が決定します。

先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金(経済産業省)は、トランス単体が対象である補助金です。

受給難易度が年々難しくなっているため、早めの計画・申請をおすすめします。

キュービクル・トランスは耐用年数ごとに交換を検討しよう

キュービクルやトランスの交換は、法的耐用年数である15年が目安といわれています。

耐用年数を超えても使用できますが、余計な電力の消費・コストがかかり、故障や波及事故を引き起こす可能性は否定できません。

キュービクルを安全に使用するためにも、耐用年数ごとのキュービクルやトランスの交換は大切です。

交換費用は発生しますが、長期的に見れば省エネ効果が期待できます。

キュービクルやトランスの交換以外にも、事故防止のために定期メンテナンスを欠かさずに行いましょう。

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