キュービクルは、消防法をはじめとした各種法令に準じて設置しなければなりません。
消防法をはじめとした各種法令を遵守できない場合は、波及事故・大規模停電などの被害が発生する可能性があるためです。
本記事では、消防法のキュービクルの設置基準や、新設する際の届出の方法を解説します。
認定・推奨キュービクルの基礎知識も、あわせてご覧ください。
目次
キュービクルは消防法・建築基準法に従って設置
キュービクルは、高圧電流を扱う機器のため、故障やトラブルが発生した際は火災に発展するリスクがあります。
そのため、消防法では政令で定める条例制定基準に従って、位置・構造・管理に関する内容を定めています。
なお、建築基準法におけるキュービクルは電気設備として扱われており、第32条【電気設備】で定めている内容は以下の通りです。
建築物の電気設備は,法律又はこれに基く命令の規定で電気工作物に係る建築物の安全及び防火に関するものの定める工法によって設けなければならない。
キュービクルが原因となる火災を予防するために、設置者は消防法・建築基準法などの法令を遵守し、安全な運用に努める義務があります。
キュービクルは消防法で定期点検が義務化
キュービクルは、設置後に安全に運用できるよう、定期的な点検が以下のように義務付けられています。
防火対象物の関係者は、点検結果を、維持台帳に記録するとともに、以下の期間ごとに消防長又は消防署長に報告しなければならない。ただし、特殊消防用設備等にあっては、設備等設置維持計画に定める点検の結果についての報告の期間ごとに報告するものとする。
不特定多数の利用者が出入りする「特定防火対象物」は毎年点検する必要があり、それ以外の建物は3年に1度の点検が必要です。
キュービクル内で使用される各種部品も消耗品扱いとなるため、メーカーの基準に準じて随時交換が必要です。
なお、キュービクルの保安点検は「キュービクルは保安点検が義務!点検内容や法律、費用などを解説」で詳しく解説しています。
キュービクルの設置に必要な届出
キュービクルは消防法・建築基準法などに関連することから、新たに設置するには届出が必要です。
キュービクルを設置する前に、必要な届出を把握しておき、よりスムーズに手続きを進めると効率的でしょう。
本章では、キュービクルの設置に必要な届出と届出書の入手先を解説します。
1.キュービクルは電気事業法で3つの規定がある
キュービクルは、自家用電気工作物に該当しており、電気事業法の3つの規定に則って設置しなければなりません。
キュービクルが該当する規定の詳細は以下の通りです。
- 事業用電気工作物の維持・技術基準適合維持
- 安規定の制定・届出及び遵守
- 主任技術者の専任・届出
上記のうち、実際に届出が必要となるのは「安規定の制定・届出及び遵守」と「主任技術者の専任・届出」の項目です。
届出の提出先は、経済産業省が管轄している「産業保安監督部」の部長です。
基本的には、キュービクルを設置する地域を管轄する産業保安監督部に提出となり、複数の管轄にまたぐ場合はそれぞれに届け出ます。
キュービクルは、設置の7日前までに地域の消防局長に届出を提出し、検査を受けなければならない点にも注意しましょう。
複数の届出を適正に管理し、漏れを防ぐためにも、チェックリストを作成すると効率的です。
2.キュービクルの設置届は4種類
キュービクルの設置に関連して必要になる届出は、以下の4つです。
- 主任技術者の選任届
- 主任技術者専任許可申請書
- 主任技術者兼任承認申請書
- 保安規定届出書(保安規定に変更がある場合は保安規定変更届出書)
必要な届出を提出しないままキュービクルを設置した場合は、法律違反となります。
必要な届出は、優先的に着手して漏れのないようにしてください。
なお、申請書の主任技術者とは、電気主任技術者のことです。
キュービクルの維持・管理には、電気主任技術者が必須となるため、雇用もしくは外部委託で確保しきましょう。
3.キュービクル設置の届出は経済産業省HPからダウンロード
キュービクルの届出は、自分で作成する必要はありません。
各様式は、経済産業省「電気設備・届出等の手引き」のページから、wordもしくはpdfでダウンロードできます。
様式を参考にして自作できるものの、不備があれば申請が滞るためおすすめしません。
届出の記入方法は、各様式のダウンロードページから確認できますが、不明な点は随時確認してください。
具体的な問い合わせ先は、地域の消防署・産業保安監督部・経済産業省などです。
消防法令に基づいた「認定キュービクル」とは?
認定キュービクルとは、消防長(消防署長)が火災予防上支障がないと認める構造を有するものです。
昭和50年に「キュービクル式非常電源専用受電設備の基準」が定められたことを背景に、一般社団法人 日本電気協会が全国的に統一した認定業務を開始。
認定キュービクルは厳しい条件をクリアする必要があるものの、消防検査が簡素化されるのがメリットです。
本章では、認定キュービクルの詳細を解説します。
1.消防法告示7・8号を満たす必要のある認定キュービクル
高圧変電設備・自家発電設備・蓄電池設備を備えた上で、消防法告示7号・消防法告示8号に適合している場合は、認定キュービクルの条件を満たしています。
しかし、認定キュービクルは条件を満たすだけでなく、検査を実施して認可されなければ「認定キュービクル」と名乗れない点に注意が必要です。
認定キュービクルの認可に複数の要素が関わるのは、防災用電源としての役割をがキュービクルに求められるため。
通常のキュービクルと比較して、耐火性能をはじめとした項目で、より厳しい基準で検査されることを想定しておきましょう。
2.認定キュービクルは災害時のレジリエンス確保が目的
災害時の長期にわたる経済活動の停滞は、企業や地域にとって大きな損失を与えます。
さらに、病院や介護施設などでは、医療機器が使えなくなるリスクもあるでしょう。
非常用発電機は、上記のようなリスクへの対策となるため、必要性が高まっています。
そのため認定キュービクルには、非常用の電源として活用できる自家発電設備・蓄電池の搭載が必須条件となっています。
近年では、企業が災害・テロなどに遭遇した際に、事業の継続・早期復旧させるためのBCP(事業継続計画)対策としても注目を集めています。
多発する自然災害は「気候クライシス」とも呼ばれ、遭遇した際に電力を確保する必要性は高まるばかり。
認定キュービクルは、様々な事態からのレジリエンス確保という面でも有効です。
3.設置基準・審査合格で認定キュービクルを利用可能
認定キュービクルの設置に必要な条件は、おもに下記の2つです。
- 非常用電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備が備わっていること
- 臨時境界から3メートル以上の距離を確保すること
臨時境界からの距離を確保できない場合は、不燃材の塀を設置します。
塀は非常用電源専用受電設備の高さ以上のものを設置して、安全性を確保してください。
なお、認定キュービクルは全ての部品が審査の対象です。
機器を交換した場合は、認定が取り消されてしまいます。
認定が取り消しとなった場合は、認定キュービクルの条件がそろっていることを確認し、再度審査を受けましょう。
認定キュービクルと推奨キュービクルの違いとは?
推奨キュービクルとは、消防法告示7号が制定される以前の基準をクリアしたキュービクルです。
よって、推奨キュービクルは消防法告示7号で求める基準をクリアする必要はありません。
しかし、これからキュービクルを設置する方の中には、認定と推奨のどちらがいいのか迷う人もいるでしょう。
本章では、推奨キュービクルの設置基準や認定キュービクルとの違いを解説します。
1.推奨キュービクルは認定キュービクル同様、設置基準クリア・審査が必要
推奨制度の目的は、感電・波及事故・キュービクルの普及が目的です。
そのため、設置基準には消防法告示7号が含まれておらず、基準のクリアは比較的容易。
ただし、火災予防条例第11条・JIS規格・高圧受変電設備規格などはクリアする必要があります。
一方で、近年では高圧受変電設備のほかに、蓄電池や非常用発電機を設置するのが一般的になりつつあります。
認定と推奨を比較すると、メリットが大きいのは認定キュービクルであることから、新たに設置する場合は認定キュービクルを選択したほうが良いでしょう。
2.認定キュービクルと推奨キュービクルの違いは隔壁の有無
認定キュービクルと推奨キュービクルは、内部に隔壁があるかないかという点が異なります。
認定キュービクルは、消防負荷設備の接続に必要な非常電源用ブレーカーの設置が必要となり、隔壁を設置する必要があります。
対して、推奨キュービクルは非常用電源ブレーカーが不要です。
用途や設置機器などによっては、隔壁が必要となる場合があるものの、必須条件ではありません。
認定・推奨キュービクルの違いは、消防法告示7号に関する内容と、内部の隔壁の有無の2点が違います。
キュービクルの安全運用を心がけたい方へ
本記事では、キュービクルと消防法の関連性や認定・推奨キュービクルを解説しました。
キュービクルに、消防法・建築基準法などの各種法令が関わるのは、高圧電流を安全に扱う必要があるためです。
そして、キュービクルの安全運用は、定期的な点検と必要時の部品交換が要となります。
当メディアを運営する株式会社ギアミクスでは、キュービクルの定期点検や部品交換に対応しております。
使用する部品は、トップランナー制度に該当する製品を使用し、安全かつ低コストなキュービクルの運用を実現。
キュービクル設置からメンテナンスまで、ぜひ当社にご相談ください。