突然の災害や事故で電力供給が停止すれば、企業の事業活動は瞬く間に立ち往生してしまいます。
最悪の事態に備え、BCPを策定して電力を確保できる体制を整えることが重要です。
しかし「そもそもBCPとは何か」「非常時に電気を確保する具体的な方法がわからない」と課題を抱えている企業も少なくありません。
本記事では、BCPの概要やBCPにおける電気設備の役割と重要性、具体的な電源対策の方法について詳しく解説します。
有事の際に事業を守り抜くために、電気設備に関するBCP対策を学んでいきましょう。
目次
BCP対策とは
BCPの概要や防災対策との違い、そして2024年4月1日から始まる介護事業者におけるBCPの義務化について解説します。
BCP(事業継続計画)の定義
BCP(Business Continuity Plan)とは、企業が自然災害やテロ、システム障害などの緊急事態に遭遇した場合でも、業務を継続して早期復旧を図るための計画のことです。
日本では「事業継続計画」とも呼ばれています。
災害時に水や電気、通信などのインフラ機能が停止することによる、事業活動に与える影響は計り知れません。
企業が被災した際の具体的な行動手順を定めることで、経済的損失を最小限に抑え、業務の中断を防ぐことを目的としています。
防災対策との違い
防災対策は、災害などのトラブルを未然に防ぐことを目的とした計画です。
一方で、BCPは災害など緊急事態が発生した後でも、早急に事業活動を継続することを目指しています。
BCP対策では防災対策だけでは想定できない、システム障害や資金調達などの不測の事態にも備える必要もあります。
防災対策よりも、広範囲な事態を想定した企業におけるリスク管理が欠かせません。
介護事業者はBCP対策が義務化
2021年の介護報酬改定により、2024年4月1日からすべての介護事業者がBCP策定と研修・訓練の実施が完全に義務付けられました。
義務化の背景には、新型感染症やパンデミック、自然災害などの緊急事態が発生した際にも介護サービスの提供継続が求められるためです。
介護サービスの提供は利用者の生活や健康、安全に直結するため、他の業種以上にBCP対策が重要視されています。
なぜBCP対策が重要なのか
BCPを事前に策定しておくことは、自然災害や事故、テロ攻撃など企業を脅かすさまざまな危機的状況に備えるために非常に重要です。
なぜBCP対策が重要なのか、具体的な理由を3つ紹介します。
事業継続と早期復旧を可能にする
自然災害やシステム障害、テロ攻撃など危機的状況が発生した場合でも、BCP対策を講じていれば重要業務を中断せずに継続が可能です。
早期の事業復旧もできるため、顧客への影響を最小限に抑えられます。
その結果、企業は信頼を維持して経済的損失を防ぐことが可能です。
冷静な判断と適切な対応ができる
BCP対策を策定すれば、有事の際でもパニックに陥ることなく、冷静に状況を判断して適切な対応ができます。
BCP策定時はあらかじめ危機的状況を想定し、具体的な対応手順を決めるからです。
対応の遅れを防ぐため、被害の拡大を最小限に食い止められます。
企業価値の維持・向上につながる
BCP対策に取り組んでいる企業は、リスクに強い体制が整備されているため、市場関係者から高い評価を得られます。
顧客の信頼も得られやすくなり、結果として企業価値の維持や向上が期待できます。
【業種別】電気設備のBCP対策
電気設備のBCP対策は業種ごとのニーズを捉え、優先順位を付けて対応することが大切です。
業種ごとの特性を踏まえたうえで、電気設備のBCP対策について紹介します。
製造業
停電によって製造ラインが止まってしまうと、多大な損失が発生します。
一時的な停電が起きた場合は、復旧時の通電により二次災害が発生する可能性も少なくありません。
製造設備の電力需要をリストアップし、非常用発電機の選定や設置場所を検討しましょう。
医療・福祉
医療や福祉業界では、入院患者や要介護者の命に関わるため、電力の確保は必須です。
災害時であっても、医療機器や生命維持装置への電源確保を最優先しなければなりません。
定期点検や燃料備蓄に加え、透析や人工呼吸器など電力を要する機器のリストアップをしましょう。
病院に必要なBCPについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
「病院に必要な非常用発電機とは?種類・設置義務・補助金の詳細も解説」
オフィスビル
勤務や来訪者の安全を守りながらも、事業継続のためにテナントオフィスへの電力供給が不可欠です。
エレベーターや照明など基本設備への電源確保だけではなく、サーバールームへの電力供給経路を確保しましょう。
防災拠点として、断水時でもトイレやエレベーターが使えるように自家発電設備を備えるなどの準備が必要です。
宿泊施設
宿泊施設は、建築基準法や消防法により厳しい規制を受けています。
停電時に客室のライフラインを維持し、宿泊客の安全を確保しなければなりません。
客室のエアコンなど最低限の電力とエレベーターや消防設備への電源確保が重要です。
大きな揺れを感知するとエレベーターが停止するのが一般的ですが、中には稼働している場合もあるので要注意です。
技術管理者は適切な手順に従って運転を停止し、利用停止の情報を掲示しましょう。
BCP対策に最適な電気設備
企業がBCP対策を実施する上で、電力の確保は非常に重要な課題となります。
停電が発生した際にも非常用発電設備の導入などにより電力を確保できれば、業務継続が可能です。
緊急時でも確実に電力が確保できるための対策や電気設備について紹介します。
非常用発電機
非常用自家発電機は、災害時や緊急時に必要な電力を確保するための重要な装置です。
ガスタービン式やディーゼルエンジン式、ハイブリッド型式などさまざまな種類があります。
非常用発電機の導入費用が気になる場合は、助成金や補助金が活用できないか確認するのもおすすめです。
産業用蓄電池
蓄電池とは、発電された電気を事前に貯めておける電池です。
放電のみを行う使い捨ての一次電池とは異なり、放電と充電を繰り返す二次電池を使用しています。
産業用蓄電池の容量は数十kWhが一般的なため、工場のように500kWh以上の大容量が必要な場合は、設備投資に負担がかかるかもしれません。
さらに、産業用蓄電池は大きな熱を発するため、設置場所には注意が必要です。
廃熱処理の経路と冷却設備を備える必要があり、屋外設置の際は風雨をしのげる建屋を設けることが求められます。
BCP対策として電気設備を導入するメリット
企業がBCP対策の一環として電気設備を導入することには、さまざまなメリットがあります。
非常時に電力が確保できるだけでなく、平常時にもメリットを紹介します。
停電時にわずか数秒で電源が確保できる
非常用発電機を導入することで、わずか数秒で電源を確保し、重要な機器や設備の停止を防げます。
大規模な震災が起きた場合、電気の復旧にかかる日数はおよそ1週間といわれています。
サーバー設備や冷蔵庫、冷凍庫など長時間停止すると損失が大きい機器には、一刻も早く電源の確保が必要です。
例えばマンションに導入すれば、エレベーターや給水ポンプなどのライフラインを維持でき、住民の安全をいち早く確保できます。
停電時でもライフラインを維持できるため、居住者に安心して生活してもらえます。
電気代が削減できる
平常時においても、非常用発電機を有効に活用できます。
電力使用量が多い時間帯にピークを迎えると、契約電力からではなく自家発電設備に切り替えることで、使用量を抑えることが可能です。
ピークカットと呼ばれる方法により、電気代の削減とBCP対策の両方が期待できます。
防災用電源として法令対策ができる
消防法や建築基準法では、一定規模以上の建物に対し、災害時に防災設備に電力を供給するための自家発電設備の設置を義務付けています。
法令で定められた仕様の設備を導入することで、建物の防災対策を強化しつつ、BCP対策にも効果的です。
BCPに発電機が必要な理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
「BCPに発電機が必須な理由とは?基礎知識と非常用電源の種類を解説」
電気設備の保安点検は必須
BCP対策として非常用の電気設備を導入しても、適切な保守点検を怠ってしまえば、有事の際に機能不全に陥ってしまう可能性があります。
電気設備については法令で定期的な点検が義務付けられており、これを怠ると罰則の対象ともなるので注意しましょう。
企業は法令を順守しつつ、電気設備の安全性を常に維持しなければなりません。
電気設備の保安点検は、電気事業法、消防法、建築基準法の3つの法令で規定されています。
- 電気事業法:常用・非常用を問わずすべての発電設備について、月次・年次など自社で定めた保安規程に基づく点検が義務付けられている
- 消防法:対象となる一定規模以上の建物では、6ヶ月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検の実施が義務付けられ、その結果を所轄消防署へ報告が必要
- 建築基準法:電気設備の種類や規模に応じて特定行政庁が点検の頻度と内容を定めており、企業は従う必要がある
電気設備は人命に係わる重要な設備であり、安全運転の確保が何より大切です。
有資格者による確実な点検を必ず実施しましょう。
保安点検について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にください。
「キュービクルは保安点検が義務!点検内容や法律、費用などを解説」
BCP対策の一環として電気設備を導入しよう
自然災害による停電発生時に、サーバーや冷蔵庫などの重要設備が停止してしまえば、企業は計り知れない損害を被ります。
BCP対策の一環として、非常時にも電力を確保できるように電気設備を導入しましょう。
非常用発電設備を備えていれば、わずか数秒で自家発電に切り替えられるため、重要設備への電力供給を維持できます。
非常用発電設備を平常時から活用し、ピーク時の電力使用を抑制すれば、電気代の大幅な削減も可能です。
消防法や建築基準法で義務付けられている建物であれば、適切な設備を導入することで法令対策にもなります。
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