発電機には常用と非常用があり、非常用発電機は台風や火災といった災害時に、建物内の設備を正常に稼働させるため電力供給をおこないます。
停電によって防災設備などが止まると、人命に関わる大惨事も起こり得るため、非常用発電機は重要な機器といえるでしょう。
国内の電力会社は、電力供給システムが非常に安定しているため災害時でも長期的に停電することはほとんどありません。
とはいえ、地震などの自然災害が多い日本において非常用発電機の需要は増加しています。
非常用発電機を導入した際には、電気事業法・建築基準法・消防法に基づく点検が必要です。
この記事では、非常用発電機における点検内容や費用、点検時の確認事項を解説します。
目次
非常用発電機の種類
一定以上の建物には、屋内消火栓やスプリンクラー、排煙機といった防災設備を設置しなければなりません。
災害時に電気の供給が止まり、防災設備が稼働しない場合に備えて非常用発電機が必要となります。
非常用発電機の種類は大きくわけて、ディーゼルエンジン非常用発電機とガスタービンエンジン非常用発電機の2つです。
それでは、非常用発電機の点検内容を確認する前に種類について理解しておきましょう。
ディーゼルエンジン非常用発電機
ディーゼルエンジン式は家庭でも使用される非常用発電機で、小型から大型まで幅広い機種があり、ガスタービン式より利用者の数が多い点が特徴です。
機械自体の費用が比較的安価なため、多くの企業で使用されていますが、燃焼する際に黒い煙が発生し、運転時に生じる振動や騒音が大きい欠点があります。
設置にはある程度の面積を確保する必要があるため、建築物によってはディーゼルエンジン非常用発電機を使用できない場合もあるでしょう。
ガスタービンエンジン非常用発電機
ガスタービン式は出力が同じ場合でもディーゼルエンジン式に比べて小型な非常用発電機で、振動面や騒音面でも優れており、安定した電力供給が可能です。
一方で、発電効率が悪く、単価が高い燃料を大量に消費するうえ、機器自体の価格もディーゼルエンジン式に比べて高価となっています。
給気や排気風量が大きいため、ディーゼルエンジン式より高熱になりやすく、排熱処理が大変である点がガスタービン式の欠点です。
非常用発電機の点検内容
非常用発電機は、電気事業法・建築基準法・消防法によって定期的な点検が義務付けられています。
点検を怠り、災害時に建物内の機器へ正常に電力を供給できないと、二次災害が起こる可能性もあるでしょう。
非常用発電機には、電力供給だけでなく波及事故を防止する役割も担っているため、点検不足が原因で周辺の住宅や電力会社に被害を与える可能性もあります。
そこで、非常用発電機を導入する際はしっかりと点検内容を把握しておくことが重要です。
それでは、非常用発電機の点検内容を解説します。
電気事業法に基づく点検
ディーゼルエンジン式非常用発電機は出力が10kWA以上、ガスタービン式非常用発電機は出力に関係なくすべてのタイプが電気事業法の対象となります。
電気事業法では常用・非常用に関わらず、すべての発電機を電気工作物として扱い、正常に稼働できる状態を維持・管理しなければなりません。
点検内容は、発電機や励磁装置の外観に異常がないか確認する月次点検と、月次点検では調査できない細かい部分を確認する年次点検の2種類あります。
年次点検で確認する項目は、以下のとおりです。
- 自動起動と自動停止装置に異常がないか
- 内部蓄電池に漏れがないか
- 部品の接続箇所や地面との設置面、接続部分に緩みはないか
- 起動装置と停止装置の動作は正常か
- 接続と絶縁抵抗値の測定
- 約5分間の空ぶかしによるエンジン試運転
電気事業法における点検では、上記のような項目を月に1回、年に1回確認します。
建築基準法に基づく点検
建築物の所有者や管理者、占有者は、建築物の敷地や構造および建築設備を常に正常な状態に維持することを建築基準法によって義務付けられています。
建築物だけでなく電源設備も検査が必要で、非常用発電機の場合は非常用照明が正常に点灯するか、発電機の蓄電池触媒栓の有効期限や液漏れの有無などを確認しなければなりません。
非常用照明は建物内すべてを対象に実施する必要があり、電球などを取り付けた状態で点検を実施。
発電機やその他の設備、発電機の起動用蓄電池の状況に関しても、その結果を保守点検報告書へ記載する必要があります。
消防法に基づく点検
消防用設備は災害時に必ず作動させなければならないため、特定防火対象の建物で、延べ面積1000平方メートル以上の場合は、防災用設備と発電機などの動力源を点検する必要があります。
点検内容は、6カ月に1回実施する機器点検と年に1回実施する総合点検の2つあり、その結果を管轄の消防署長に届出しなければなりません。
機器点検では、無負荷の状態で試験運転をおこない、計器類の動作確認や異音の有無、排気状況、機器に損傷がないかなどを確認し、結果を報告書に記載することを消防法で義務付けられています。
総合点検では、年に1回、すべて又は一部の設備を作動させ、総合的な機能の確認と30%以上の実負荷試験が必要です。
非常用発電機の点検にかかる費用
非常用発電機の負荷試験は、専門業者への依頼が一般的です。
非常用発電機の負荷試験にかかる費用は、発電機の容量や設置場所をもとに算出します。
費用相場は、20kWA以下の場合は15~20万円、230kWA以上の場合は30~50万円ほどです。
30%以上の負荷試験でおこなうと費用が安くなりますが、100%の負荷試験をおこなうと費用が高くなります。
以前では、大容量の非常用発電機を負荷試験すると100万円以上の費用が発生しましたが、負荷試験が義務付けられてからは3分の1ほどに費用が低下。
依頼する業者によって異なりますが、なかには12回分割の月払いに対応している場合もあるため、予算に余裕がなくても比較的非常用発電機を点検しやすいといえます。
なお、点検にかかる正確な費用を算出するには、実際に現場を調査するか、電話で発電機の容量や設置場所といった情報のヒアリングが必要です。
非常用発電機における点検時の確認事項
非常用発電機は定期的に点検し、正しい管理や修繕をおこなえば30年ほどは使用できます。
ただし、非常用発電機の点検は特定の資格保有者でないと確認作業ができません。
そこで、非常用発電機の点検を依頼すべき資格保有者と点検表へ記載すべき内容ついて解説します。
なお、非常用発電機が使用できる期間や劣化しやすい部分について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
非常用発電機の耐用年数とは?劣化部分やメンテナンスの必要性を解説 – ギアミクス
点検を依頼すべき資格保有者
電気事業法における点検では電気主任技術者もしくは電気管理技術者、建築基準法における点検では一級・二級建築士、建築設備検査員、防火設備検査員などの資格保有者が作業を実施できます。
消防法で定める負荷試験の場合、非常用発電機の点検をおこなる資格保有者は、消防設備士や消防設備点検資格者です。
さらに、自家発電機の知識や技能を備えている自家発電設備専門技術者の資格も必要となります。
よって、負荷試験をおこなう際は、消防設備士もしくは消防設備点検資格者と、自家発電設備専門技術者の資格を保有する人業者に依頼しましょう。
点検表へ記載すべき内容
非常用発電機の負荷試験をおこなう際は、下記の内容を確認できる点検表を作成する必要があります。
ア 運転中に漏油、異臭、不規則音、異常な振動、発熱等がなく、運転が正常であること。
イ 運転中の記録はすべて製造者の指定値範囲であること。
※(ア)疑似負荷装置の設置については、容量、設置場所、仮設給排水方法、仮設ケーブル敷設、危険標識設置、監視員の配置等について、電気主任技術者及び防火管理者と十分打合せを行って実施すること。
(イ)負荷運転前の確認事項
負荷運転前に、施設全般にわたり次の事項を確認すること。
a 機器点検における始動試験の始動前の確認事項
b 原動機と発電機のカップリング部のボルト、ナットに緩みがなく、フレシキブルカップリングの緩衝用ゴムにひび割れ等の損傷がないこと。
(ウ)負荷運転後の確認事項
a 負荷運転の終了後は、スイッチ、ハンドル、弁等の位置が自動始動運転待機状態になっていることを確認すること。
b 消費した燃料、冷却水が補給されていることを確認すること。
点検表に記載すべき事項には、点検内容のほかにも、安全対策や工程表・スケジュールなどもあります。
負荷試験をスムーズに進めるためにも、点検表には点検までの準備や工程などの記載も必要です。
非常用発電機を点検し正しく管理しよう
この記事では、非常用発電機における点検内容や費用、点検時の確認事項を解説しました。
非常用発電機の点検は、電気事業法・建築基準法・消防法によって義務付けられています。
災害時における電力供給だけでなく、波及事故を防止する役割も担う非常用発電機は、常に異常なく稼働し続ける必要があるため定期点検が大切です。
もし、点検不足によって生じた事故により、周辺にあるビルや工場、電力会社の電気設備を停電させてしまうと損害賠償金を支払う必要もあります。
非常用発電機を導入したら、負荷試験を依頼できる業者を見つけておきましょう。
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