介護施設は非常用発電機の設置が義務!種類・選び方・注意点を解説

介護施設は非常用発電機の設置が義務!種類・選び方・注意点を解説

介護施設では、空調・ナースコール・喀痰吸引器など、施設利用者の健康や命を守るための機器が使用されています。

そのため、停電が発生した際の備えとして非常用発電機の設置が求められています。

しかし、どのような非常用発電機が介護施設向けなのかわからず、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

当記事では、介護施設向けの非常用発電機や導入するメリットを解説します。

選び方のポイントや設置時の注意点も、あわせてご覧ください。

介護施設に設置できる6種類の発電機

非常用発電機の導入を検討する際に、はじめに押さえておくべきなのは、発電機の種類とそれぞれの特徴です。

発電機ごとの特徴を把握することで、設置する環境や条件に当てはまるかを探れます。

本章では、介護施設で活用できる6種類の発電機とそれぞれの特徴を解説します。

1.大容量で低コスト「ディーゼル式発電機」

ディーゼル式発電機は、大規模な介護施設におすすめの発電機です。

ディーゼル式発電機は、ほかの発電機と比較して最大発電量が多く、3,000kVA以上といった大容量の機種が販売されています。

そのため、複数の事業所が一ヶ所に集まっている法人のような大規模な介護施設向きと言えるでしょう。

ディーゼル式発電機は低コストなのも魅力のひとつ。

ディーゼル式発電機は、大規模な介護施設の必要電力を1台でまかなえるパワーがあり、低コストで購入できます。

2.小回りがきく「ガソリンエンジン発電機」

ガソリンエンジン発電機は、屋外に一時的に避難した際の喀痰吸引器用の電源として便利です。

なぜなら、ガソリンエンジン発電機は小型機種が多く、持ち運びが容易なため。

避難先への移動を待つ間も、喀痰吸引器を使用できれば、施設利用者の命を守れます。

ただし、ガソリンエンジン発電機は屋内での使用は厳禁です。

消費生活に関わる東京都の情報サイト 東京くらいWEB「発電機の屋内使用は大変危険です!」が実施した実験によると、室内の一酸化炭素濃度が短時間で危険値に達したという結果が出ています。

ガソリンエンジン発電機は、注意点を守り、安全に活用しましょう。

3.補助金の対象になる「定置式LPガス発電機」

定置式LPガス発電機は、燃料の長期保管ができて騒音が少ないのがメリットです。

LPガスは空気にふれずに保管されるため、約20年間保存でき騒音の少ない内部構造になっています。

定置式LPガスは「石油ガス災害バルク当の導入事業費補助金」の対象となるのもポイント。

経済産業省 資源エネルギー庁では、令和6年の補助事業者の公募が始まっているため、導入時は補助金の申請も検討すると良いでしょう。

ただし、定置式LPガス発電機は発電容量が低めな点に注意してください。

必要電力量に応じて、必要時は複数台の設置を検討する必要があります。

4.ガスボンベを使用可能「可搬式LPガス発電機」

可搬式LPガス発電機は、定置式LPガス発電機の導入を検討している、または導入している介護施設におすすめです。

その理由は、保管する燃料が統一されて、管理の手間を省力化できるため。

可搬式LPガス発電機を活用できるシーンや注意点は、前述したガソリンエンジン発電機と同様です。

可搬式LPガス発電機は、屋外での一時的な機器使用に向いている一方で、屋内では一酸化中毒のリスクがあります。

5.自然エネルギーを活用「太陽光発電システム」

太陽光発電システムは、ほかの非常用発電機との併用や、日常的なピークカットを検討している介護施設にぴったりです。

太陽光発電システムが発電した電気を、日中に活用することで電力や燃料の消費を削減できます。

太陽光発電システムのデメリットは、天候に左右される点と、降雪時は発電できない点。

太陽光発電システムは、日照時間・導入コスト・使用目的などを踏まえた検討が必要です。

6.燃料不要「蓄電池」

近年では蓄電池の大容量化にともない、施設内に設置する介護事業所が増えています。

代表的な活用例としては、電力が安定しにくい太陽光発電システムと併用するスタイルです。

蓄電池は、ハイブリッド型非常用発電機にも搭載されています。

ハイブリッド型非常用発電機とは、燃料を使った発電中に蓄電池に充電し、充電後に蓄電池に切り替わる発電機のこと。

蓄電池はピークカットにも活用できるため、コストパフォーマンスに優れる選択肢とも言えるでしょう。

介護施設に発電機を導入する3つのメリット

発電機そのものは、導入コストを回収する力はほとんどありません。

しかし、介護施設への発電機導入は、様々なメリットの獲得につながります。

本章では、介護施設に発電機を導入したときの3つのメリットを解説します。

メリット1.非常用発電機で災害対策

日本は地震大国であり、世界的に見ても大規模地震の回数が多いことが、内閣府 防災情報のページ「世界に比較する日本の災害」を見るとわかります。

さらに、近年では台風や大雨などの被害も相次ぎ、介護施設にも利用者を守るための非常用発電機の設置が求められています。

介護施設は、医療機関・ケアマネージャー・家族など、複数の相手と連絡調整が必要です。

介護施設によっては、人工呼吸器やエアマットなど、施設利用者の健康に直接的に関わる機器を有している場合もあるでしょう。

介護施設の災害対策として、非常用発電機による電気や通信などのライフライン確保が重要性を増しています。

メリット2.介護施設の発電機はBCP対策に有効

厚生労働省は介護施設に対して、2024年4月からBCPの策定を義務化しました。

BCP(Buisiness Continuity Plan:事業継続計画)とは、自然災害・テロ・事故・感染症にともなう被害が生じた際も事業を中断せず、万が一中断した場合は早急に復旧させるための計画です。

厚生労働省は「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」のページで動画を公開し、介護施設のBCP対策を支援しています。

そして、介護施設が非常時に事業を継続するには、電気を確保する手段の準備が欠かせません。

したがって、介護施設のBCP対策に発電機が必須と言えます。

なお、BCPは「BCPに発電機が必須な理由とは?基礎知識と非常用電源の種類を解説」にも掲載しています。

メリット3.発電機導入で介護施設の付加価値向上

要介護者が介護施設を選ぶときは、提供するサービスの内容や利用料金などを重視するかもしれません。

しかし、非常時の備えが不十分では施設利用者の安全を守り切れず、介護施設の付加価値が低迷してしまいます。

介護施設は「施設利用者の安全を確保できる」という付加価値を得るためにも、非常用発電機の導入が必須です。

介護施設の発電機を選ぶときの2つのポイント

多額のコストを投入した非常用発電機であっても、非常時に活用できなければ意味がありません。

本章では、介護施設の非常用発電機を選ぶときの2つのポイントを解説します。

非常用発電機を比較・検討する材料として把握しておきましょう。

ポイント1.発電機の容量

発電機は、施設内の機器の必要電力を全て足した電力量より大きめの容量のものを選んでください。

停電発生後は、施設内の機器がほぼ同時に再起動される可能性があるためです。

さらに、機器によっては連続運転時よりも起動時のほうが必要電力が多い場合も想定できます。

容量に余裕がありすぎるのもムダになりますが、発電機は「大は小を兼ねる」の精神で選ぶと安心です。

ポイント2.設置場所の広さ

発電機の中には、本体のほかに付属パーツが必要だったり壁との距離が指定されていたりといったものがあります。

ゆえに、設置場所の広さは安易に決定せず、非常用発電機の販売・設置業者と検討を重ねた上で決定しましょう。

特に注意すべきは、ディーゼル式発電機を導入する場合です。

ディーゼル式発電機は、冷却装置や排煙装置に加えて、燃料貯蔵量が多いときは貯蔵設備を要します。

介護施設に非常用発電機を設置する際の2つの注意点

介護施設に非常用発電機を導入する際に、非常用発電機選びに集中するあまり、注意点を見逃してしまう場合もあるでしょう。

本章では、介護施設に非常用発電機を設置する際の2つの注意点を解説します。

想定外の事態を防止するために活用ください。

注意点1.発電機使用時の振動・騒音

最近の非常用発電機は、技術の発展によって振動や騒音は少なくなっています。

しかし、非常用発電機が発する振動や騒音はゼロではありません。

非常事態には、施設利用者は精神状態が不安定になり、大きなストレスがかかります。

非常時のストレスに非常用発電機の振動・騒音が加わるのは、可能な限り避けるのが施設利用者のためです。

非常用発電機は、どの程度の振動・騒音が発生するのかを把握することが大切です。

注意点2.非常用発電機は6年に1度の点検が義務

消防法により、非常用発電機の点検が義務化されています。

非常用発電機の点検が義務化された目的のひとつは、メンテナンス不足が原因の不始動や停止を防ぐこと。

総務省 消防庁が発表した「東日本大震災における自家発電設備のメンテナンス不良による不始動・停止台数」には、実際に不始動・停止した台数があったことが記載されています。

非常用発電機が動かなければ、施設利用者の安全は確保できず、中には命の危機にさらされる人もいるでしょう。

非常用発電機の点検は必ず定期的に実施して安全確保につなげてください。

なお、非常用発電機の点検詳細は「非常用発電機の負荷試験とは?6年周期の条件や法改正の内容も解説」をご覧ください。

介護施設に非常用発電機の導入を検討している方へ

本記事では、介護施設に設置できる非常用発電機の種類や導入するメリットなどを解説しました。

介護施設を取り巻く環境は変化を続けており、災害時の安全性の確保が大きな課題となっています。

当メディアを運営する株式会社ギアミクスは、非常用発電機の設置・定期点検を実施しております。

介護施設への非常用発電機導入や定期点検の依頼先を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。