常用発電機とは?非常用発電機との違いや導入のメリットを解説

常用発電機とは?非常用発電機との違いや導入のメリットを解説

常用発電機は、電気代削減につながるほか、非常時にも活用できるため需要が高まりを見せています。

常用発電機を選ぶときは、基礎知識や選び方を抑えておくことが大切です。

本記事では、常用発電機と非常用発電機の違いや基礎知識を解説します。

常用発電機を導入するメリットや選び方も、あわせてご覧ください。

常用発電機とは?

画像引用:内発協ニュース4月号 通巻第145号

常用発電機は、自家発電設備のひとつであり、工場や電源がない地域での作業に活用される動力源です。

常用発電機は、用途に応じて発電専用・コージェネレーション用・常用防災兼用の3種類に分類され、幅広い分野で活用されています。

設置する目的によって異なりますが、常用発電機に関連する法令は以下の5つです。(参照:内発協ニュース4月号 通巻第145号

  • 電気事業法:電気工作物としての規制
  • 消防法:消防用設備等の非常電源としての規制(常用防災兼用の場合)・危険物としての規制
  • 地方自治体が制定した火災予防条例等:対象火気設備としての規制
  • 建築基準法:建築設備の予備電源としての規制
  • 大気汚染防止法:ばい煙発生施設(規制対象になるものに限る)としての規制

ばい煙発生施設の規制対象に該当するかは、環境省「大気汚染防止法の対象となるばい煙発生施設」のページで確認できます。

自社に常用発電機を導入する際は、使用目的を検討した上で、該当する関連法案を確認しておくと安心です。

常用発電機と非常用発電機の2つの違いとは?

常用発電機や非常用発電機は、見た目が似ている一方で、機能や点検頻度は大きく異なります。

本章では、常用発電機と非常用発電機の違いを解説します。

違い1.稼働頻度

まずは、常用発電機と非常用発電機でそれぞれが想定している稼働頻度を比較してみましょう。

  • 常用発電機:毎日8~15時間の連続運転を見込んだ仕様(ディーゼル式発電機の場合)
  • 非常用発電機:最低でも72時間の電力供給を見込んだ仕様

常用・非常用問わず、発電機は燃料補給を要するため、連続運転時間は燃料タンクの容量に比例します。

そのため、長時間の連続運転ができる発電機を要する場合は、燃料タンク容量の大きいタイプを選択すると良いでしょう。

違い2.点検頻度

続いて、常用発電機と非常用発電機の点検頻度を比較してみましょう。

  • 常用発電機:点検頻度は年に4~12回
  • 非常用発電機:1時間以上の運転は長時間対応型を選ぶ必要がある。点検頻度は年に1回

常用発電機が非常用発電機に比べて点検頻度が高いのは、使用頻度が高く稼働時間が長いためです。

常用発電機の仕様にもよりますが、運転時間の累計が100時間を超えるごとにエンジンオイルを交換する場合もあるため、こまめなチェックは欠かせません。

一方で、非常用発電機は使用頻度が低いからと言って、部品の交換が不要という訳ではない点に要注意。

部品は使用頻度の高さに関係なく、時間経過にともなって劣化が進行します。

そのため、1度も使用していない場合でも、一定期間ごとに部品の交換が求められます。

常用発電機・非常用発電機の届出に違いは少ない

常用発電機や非常用発電機の設置に際して、必要な届出はおもに以下の2つです。

  • 経済産業局申請手続き:公害防止に関する工事計画書の届出
  • 消防署申請手続き:電気設備設置(変更)届出・仕様書(説明書)・少量危険物貯蔵取扱届出

常用・非常を問わず、必要な届出は基本的に同じです。

ただし、常用発電機の場合は国土交通省が定める騒音基準値(98dB)をクリアする必要があります。

非常用発電機は騒音基準値のクリアは不必要なものの、自治体によっては騒音源と定めている場合も。

騒音については、98dBを目安として、発電機の設置前に各自治体に確認しておくと安心です。

常用発電機・非常用発電機が活躍するシーン

常用発電機・非常用発電機は、導入する目的が違います。

本章では、常用発電機と非常用発電機が活躍するシーンを解説します。

常用発電機と非常用発電機が活躍するシーンを把握することで、導入目的を検討する際の材料になります。

【常用発電機】コージェネレーション

常用発電機の主要な目的としては、工場や商業施設などのピークカットによる節電です。

しかし、近年では発電機の排熱を給湯や冷暖房に利用するコージェネレーションを目的とするケースも増加しています。

発電機が排出する熱を有効活用することで、エネルギー効率を向上させるのです。

設備の内容によるものの、コージェネレーションにより、総合的なエネルギー効率の7~8割向上を実現。

常用発電機の排熱を有効活用することで、サステナブルな取り組みへの可能性が見出されました。

なお、常用発電機の耐用年数は15年が目安です。

経済産業省の「租税特別措置等に係る制作の事前評価書」では、コージェネレーションの法定耐用年数は15年とされていることから、コージェネレーションに欠かせない常用発電機の耐用年数も同程度と判断できます。

【非常用発電機】災害発生時

日本は地震大国として知られているほか、近年では台風・大雨などに起因した災害が多発しています。

大規模な災害発生時は停電するケースが多く、日常生活で当たり前に使用しているスマートフォンやエアコンなどの使用が制限されがちです。

短時間の停電では「ちょっとの間の我慢」で済みますが、長時間にわたって停電した場合は違います。

電気が使えないことが大きなストレスとなり、体調不良の原因になりかねません。

長時間の停電は経済活動にも大きな影響を与えます。

取引中止や冷蔵・冷凍食品のロスなどにより、おおきな経済損失が生じるのは明らかです。

非常用発電機は、上記のような課題を解決できる方法のひとつとして重宝される存在です。

常用発電機を導入する3つのメリットとは?

常用発電機は、決して安い買い物ではありません。

しかし、常用発電機には投資をするだけの価値があります。

本章では、常用発電機を導入する3つのメリットを解説します。

メリット1.ピークカットで光熱費削減

常用発電機は、消費電力の多い時間帯のピークカットに有効です。

近年では、太陽光発電をはじめとした再エネと蓄電池を組み合わせる手法も一般的になりつつあるのも事実。

しかし、再エネは天候に左右されやすく、出力が不安定になりがちなのがネックです。

実際に、関西電力では出力が不安定な点を課題として、公式サイトの「再生エネルギーの課題」で言及しています。

その点、常用発電機は安定した電力を獲得できるため、ピークカットに有効です。

メリット2.非常時の電力源に活用

常用発電機の中には、非常用発電機としての機能を兼ねているタイプの製品も販売されています。

常用発電機を非常用発電機と兼ねる場合のメリットは、いざという場面で動作不良を引き起こすリスクが低減すること。

たとえば、総務省消防局は「東日本大震災における自家発電設備のメンテナンス不良による不始動・停止台数」で、非常用発電機のうち約5%が不始動・停止したことを発表しました。

しかし、日常的に動作させる常用発電機の場合は、メンテナンス不良の早期発見が可能です。

メンテナンス不良が早期に発見されれば、非常時に動かないと言うリスクが回避できます。

メリット3.BCP対策に有効

日本は地震大国として知られているほか、近年では自然災害による被害が拡大しています。

実際に、国土交通省が発表した「国土交通白書2020」では、自然災害の頻発・激甚化を課題視。

同時に、非常時に事業を継続させる計画であるBCPを策定する重要性が高まっています。

そのため、新たに発電機を設置する場合は、常用・非常用を兼ねた製品を選ぶ企業が増加する傾向にあります。

常用発電機を選ぶときの3つのポイント

常用発電機の導入決定後に、どのような製品を選ぶべきかを悩む声が多く聞かれます。

本章では、常用発電機選びの3つのポイントを解説します。

ポイント1.常用・防災兼用の常用発電機か

BCP対策としての観点も含めて発電機を設置する場合は、常用・防災兼用の発電機を選びましょう。

常用発電機としての性能も追求する場合は、定置式LPガス発電機がおすすめ。

定置式LPガス発電機は、連続運転時間が長く、災害時にも燃料供給が途絶えにくいのが特徴です。

定置式LPガス発電機は「石油ガス災害バルク等の導入事業費補助金」にも該当しているため、導入する際は活用を検討するとイニシャルコストダウンにつながります。

なお、非常用発電機の種類は「BCPに発電機が必須な理由とは?基礎知識と非常用電源の種類を解説」をご覧ください。

ポイント2.常用発電機の容量は適正か

常用発電機の適正な容量は、どのタイミングで稼働させるかによって異なります。

仮に、工場内の機械の動作が安定した後に稼働させた場合は、必要電力量は一定です。

しかし、機械の動作電力もカバーするとなった場合は、初動時の電力も含めた計算が必要です。

非常用発電機と兼用するときは、上記の電力量計算に加えて、非常時に稼働する機器の電力量も計算しなければなりません。

ポイント3.定置式か移動式か

定置式発電機か移動式発電機かを選ぶ際は、使用場所をもとに検討します。

製造工場であれば発電機を動かす必要がないため定置式が、林間での作業には移動式が適切でしょう。

定置式と移動式のどちらにするかによって、使い勝手のいい燃料が異なる点にも気を付けてください。

たとえば移動式の場合は、作業場所の近くで補給しやすいガソリンや軽油が便利です。

対して、定置式はコストパフォーマンスや安全性を優先してLPガスが適しています。

常用発電機は、使用するシーンに応じて多角的な視点での検討が必要です。

常用発電機を導入するときの2つの注意点

常用発電機にかけるコストに見合った結果を得るためには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

本章では、常用発電機を導入するときの2つの注意点を解説します。

注意点1.目的を明確化

常用発電機は、なぜ・何のために導入するかを明確にする必要があります。

なぜなら、常用発電機選びやコストに気を取られて、目的に沿わない製品を導入するケースがあるためです。

ピークカット・主要電源など、常用発電機を導入する目的を明確にした上で、検討チームで共有するのが大切です。

特に、イニシャルコストに気を取られないようにしましょう。

イニシャルコストが高くても、長期的に計算すると十分なパフォーマンスを発揮できる場合もあります。

注意点2.ランニングコストを考慮

常用発電機は、可燃性の燃料を扱うことから、定期的なメンテナンス・点検が欠かせません。

そのため、導入を検討する際は、常用発電機ごとにランニングコストを比較すべきでしょう。

発電機の点検方法は、おもに下記の2種類です。

  • 実負荷試験:発電機に実際に使用する機器を接続して負荷をかける点検方法。施設内の停電や、負荷が安定しにくい上に、多くの人員を要するためコスト高。
  • 模擬負荷試験:発電機に専門の機器を接続して疑似的な負荷をかける点検方法。停電リスクがなく、負荷が安定して精度の高い結果が得られる。少人数で対応できて低コスト。

上記のように、点検方法によっては不要なコストが発生することもあります。

点検は、低コストで精度の高い模擬負荷試験を実施している業者に依頼すると、ランニングコストを抑えられます。

常用発電機・非常用発電機のメンテナンスでお悩みの方へ

本記事では、常用発電機と非常用発電機の違い・導入のメリット・選び方をお伝えしました。

電気代が高騰を続ける中で、光熱費の削減が必要な場合は、常用発電機の導入を検討してみましょう。

なお、当メディアを運営する株式会社ギアミクスでは、非常用発電機の模擬負荷試験を実施しています。

当社は、現地の状況に合わせた柔軟な提案力と豊富なノウハウで、コストと品質を両立させたサービスを提供致します。

常用発電機・非常用発電機のメンテナンスでお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。