キュービクルはさまざまな建物で活用される一方で、万が一の事故を防止するために、本体や機器の耐用年数に注意が必要です。

しかし、キュービクルの本体・機器ごとの具体的な耐用年数を把握している人は少ないのではないでしょうか？

本記事では、キュービクル本体と機器ごとの耐用年数を解説します。

キュービクルの保守点検が大切な理由や寿命を延ばすポイントも、あわせてご覧ください。

キュービクル本体の耐用年数

キュービクル本体の耐用年数は、おもに2種類あり、それぞれが異なった年数を提示しています。

本章では、キュービクルの2種類ある耐用年数の違いを解説します。

法定耐用年数と実用耐用年数の違い

法定耐用年数と実用耐用年数の違いを比較してみましょう。

• 法定耐用年数：税法上の減価償却資産の耐用年数。固定資産の減価償却費を算出する際に使われるが、実際の使用可能期間と一致しない場合がある。
• 実用耐用年数：機器が使用可能な現実的な期間。メーカーや業界団体が推奨する交換時期の目安だが、使用環境やメンテナンスの状態で変動する場合がある。

法定耐用年数と比較すると、実用耐用年数のほうが期間が長いのが特徴です。

法定耐用年数の期間が短いのは、高圧電流を扱う安全上の理由と、減価償却資産として扱う必要があるため。

会計上の観点からは法定耐用年数が注視され、保守管理上では実用耐用年数が注視されるのが一般的です。

キュービクル本体の法定耐用年数は15年

法定耐用年数は国税庁が示している期間で「国税庁 第2節 建物付属設備」で詳細を確認できます。

減価償却期間が経過する前に、交換や撤去した際は会計上の減損処理が発生するため、設備更新の際は法定耐用年数を考慮することが大切です。

しかし、法定耐用年数は実際の使用可能期間と異なるケースが多いため、実用耐用年数も同時に考慮しなければいけません。

なお、15年という期間は、新品のキュービクルを購入した場合です。

中古のキュービクルを購入した際は違う点に注意しましょう。

キュービクルを新たに設置する場合に欠かせない設置基準は「消防法のキュービクルの設置基準とは？届出や認定・推奨の獲得方法も」をご覧ください。

キュービクル本体の実用耐用年数は20年

キュービクル本体の実用耐用年数は、保守管理上で参考とされる期間で、長い場合は30年使用できた例もあります。

キュービクル本体の実用耐用年数に差が生じるのは、おもに下記3つの要因があります。

• 構造的耐久性：キュービクル本体に使用する金属が環境に適していると長期間活用できる。
• 環境要因：屋内よりも屋外のほうがダメージが蓄積されやすく、寿命が低下しがち。
• 内部機器更新：キュービクル内部の機器を更新することで、キュービクル全体の長寿化を図れる。

キュービクルを長寿化するには、本体のみに気を取られず、内部機器のメンテナンスも考慮する必要があります。

キュービクル内に設置された機器の耐用年数

キュービクルの内部機器の耐用年数を把握することで、より適したメンテナンスのタイミングを把握できます。

本章では、キュービクル内部に設置された機器の耐用年数を解説します。

キュービクル内の機器|耐用年数一覧

部品の材料・キュービクルの設置場所・電圧の違いによって部品ごとの耐用年数は異なります。

キュービクル機器ごとの耐用年数は以下です。

• 変圧器：法定耐用年数15年・実用耐用年数20年
• 屋内用ヒューズ：法定耐用年数15年・実用耐用年数15年
• 屋外用ヒューズ：法定耐用年数10年・実用耐用年数10年
• コンデンサ：法定耐用年数15年・実用耐用年数15年
• 高圧遮断器：法定耐用年数15年・実用耐用年数20年
• 断路器：法定耐用年数15年・実用耐用年数20年
• 高圧負荷開閉器：法定耐用年数15年・実用耐用年数20年
• 避雷器：法定耐用年数15年・実用耐用年数15年
• 計器用変成器：法定耐用年数15年・実用耐用年数20年
• 保護継電器：法定耐用年数15年・実用耐用年数20年
• 高圧カットアウト：法定耐用年数15年・実用耐用年数20年

法定耐用年数は、実用耐用年数より5年ほど短く設定してあります。

実用耐用年数は、製造会社によって異なるため確認が必要です。

機器の耐用年数管理の重要性

キュービクルの内部機器は、高圧電流を処理するための重要なものがほとんどです。

そのため、キュービクルの長寿化と安全性を両立させるには、内部機器の耐用年数管理は欠かせません。

同時に気を付けるべきは、減価償却の処理です。

キュービクル本体と同様に、減価償却期間が経過する前に交換した際は減損処理が発生します。

キュービクルの内部機器は、法定耐用年数と実用耐用年数の両方を管理し、適切なタイミングで対応しましょう。

キュービクルの保守点検が重要な4つの理由

キュービクルを安全に活用するには、本体や機器の交換のほか、定期的な保守点検も大切です。

本章では、キュービクルの保守点検が重要な4つの理由を解説します。

キュービクルの定期点検が義務

キュービクルは、電気事業法によって定期点検が義務化されています。

定期点検を怠った場合は、300万円以下の罰金が科せられるケースも。

定期点検は電気主任技術者でなければ実施できない点も要注意です。

電気主任技術者は、外部委託する形態でも構わないため、確実に任命しましょう。

なお、キュービクルの定期点検については「キュービクルは保安点検が義務！点検内容や法律、費用などを解説」もご覧ください。

メンテナンスで予防保全につながる

キュービクルの予防保全とは、機器の故障前にメンテナンスして、故障を予防することです。

清掃による絶縁性能の低下防止・ボルトやナットの締め付け確認・消耗部品交換などを含む作業を実施し、突発的な事故の防止につなげます。

定期点検の予防保全という観点は、キュービクルを長寿化するほか、安全活用の大きな基盤として認識しておきましょう。

保守点検の記録が更新時期の明確化に役立つ

保守点検の記録をデータとして活用することで、どの機器が劣化傾向にあるかを把握できるため、更新時期の予測精度が向上します。

結果的にキュービクルが故障し、電気が使えなくなるリスクを軽減でき、社会的な信頼獲得にも期待できるでしょう。

保守点検の記録は、キュービクルのメンテナンス業者と連携して活用するのがポイントです。

キュービクルのメンテナンス業者と連携することで、機器の更新のほか、万が一の事態が発生した際のスピーディな解決にも役立ちます。

事故リスクの軽減

キュービクル設置場所によって、起こりうる劣化による事故が変わります。

屋内にキュービクルを設置している場合、起こる可能性が高い事故がホコリに蓄積による漏電や火災です。

定期的に点検していても、清掃が十分でないとホコリによって漏電事故につながる恐れがあります。

漏電から火災に発展する可能性もあるため、点検と同様に清掃を怠らないようにしましょう。

屋外にキュービクルを設置している場合は、雨風により外箱やケーブルの劣化し、そこから雨や砂埃が侵入することで漏電を起こす場合があります。

点検時に外箱やケーブルで錆びている部分や隙間がある場合、そのまま放置していると、漏電事故へと発展する恐れがあるため速やかに修繕しましょう。

キュービクルの寿命を伸ばす3つのポイント

キュービクル本体や構成する機器は決して安い買い物ではないため、出来る限り長く使いたいと考える人も多いのではないでしょうか。

本章では、キュービクルを長寿化するための3つのポイントを解説します。

日常的な清掃

キュービクル内にホコリを溜めないために、日常的な清掃は大切です。

日常的な清掃は、機器の劣化の早期発見につながる・異常な音や臭いに気付きやすい、といった観点からも有効です。

ただし、キュービクルの日常的な清掃は、感電のリスクがある点に注意してください。

安全な清掃を実施するには、専門業者に依頼するのが有効な方法です。

キュービクルのメンテナンス業者を選ぶポイントは「キュービクル・メンテナンス会社はどこがいい？選ぶポイントを解説」をご覧ください。

定期的なメンテナンス

耐用年数以上にキュービクルを使用するには、定期的にメンテナンスが必要です。

メンテナンスを怠ると、法定耐用年数以下の使用期間で修繕や交換が必要になるでしょう。

キュービクルでは、電気主任技術者が点検をおこなうことが義務付けられており、月次点検や年次点検をおこないます。

月次点検では、キュービクルの稼働中に正しく作動しているか、修繕箇所の有無を確認。

年次点検では、キュービクルの使用を止め停電した状態で、稼働中にはできない内部の確認や修繕をおこないます。

月次・年次点検の確実な実施

月次・年次点検が義務化されているのには、以下のような理由があるためです。

• 漏電・感電・火災リスクを低下させるため
• 停電事故を防止するため
• キュービクルの故障に起因した停電が周辺地域にも影響を与える波及事故を防止するため

キュービクルの月次・年次点検を実施することで、実施する側にも、電気代を削減できるというメリットがあります。

点検が節電につながるのは、キュービクルを適切にメンテナンスすることで、機器の効率が低下しにくくなるのが理由です。

キュービクルの節電には、トップランナー制度の知識を深めることも大切です。

トップランナー制度は「トップランナー制度とは？対象機器や制度適合のメリットも解説！」をご覧ください。

キュービクルを定期的な点検・メンテナンスで安全に使おう

本記事では、キュービクルの耐用年数とメンテナンスの重要性を解説しました。

キュービクルは、耐用年数のみにフォーカスするのではなく、定期点検を通じた劣化度合いの把握や必要時の交換が重要です。

コストパフォーマンスと安全性を両立させるためにも、定期的なメンテナンスと都度の更新は怠らないようにしましょう。

当メディアを運営する株式会社ギアミクスは、キュービクルの新規設置・メンテナンス・リニューアルなどを手掛けております。

キュービクルの点検・メンテナンスなどでお悩みの方は、気軽にお問い合わせください。