エレベーターの設置・維持費用の相場とは?シーン別に解説

エレベーターの設置を検討するときに、重要視されるのが設置・維持費用の相場です。

設置や維持にどの程度のコストを見積もるべきかを把握することで、予算管理が容易になります。

本記事では、エレベーターの設置・維持費用の相場を解説します。

エレベーターの維持費用を削減するためのポイントも、あわせてご覧ください。

エレベーターの基礎知識

種類やサイズを理解することで、設置する環境に適したエレベーター選びに役立ちます。

本章では、エレベーターの基礎知識を解説します。

1.エレベーターは2種類

エレベーターは、大きく分けて「ロープ式」と「油圧式」の2種類があります。

それぞれの特徴は以下の通りです。

  • ロープ式:かご部分をロープで支える構造。釣合いおもりを使用するトラクション式と、ドラムにロープを巻きつける巻胴式があり、トラクション式は機械室があるタイプとないタイプがある。
  • 油圧式:油圧シリンダーを利用した構造。油圧シリンダーにエレベーターを直結する直接式、ロープを介する間接式、アームと油圧ジャッキを併用するパンダグラフ式がある。

近年では、ロープ式エレベーターが主流です。

その理由は、油圧式エレベーターは昇降できる距離の限界が低い・昇降速度が遅い・消費電力が多い、などが挙げられます。

油圧式エレベーターの新規製造を中止したメーカーもあり、リニューアルのタイミングで路^-プ式エレベーターに切り替えるケースも。

長期的な利用を考慮すると、ロープ式を選択するのが安心でしょう。

2.エレベーターのサイズラインナップはおもに4種類

エレベーターのラインナップは、おもに「小規模建物用小型エレベーター」「ホームエレベーター」「常用エレベーター」「寝台用エレベーター」の4種類です。

それぞれの特徴は下記の通りです。

  • 小規模建物用小型エレベーター:定員3名・積載量200kg・かご床面積1.1㎡以下・昇降工程10m以下。福祉施設・協会・診療所・学校などが設置対象。定期検査が必要。
  • ホームエレベーター:定員3名・積載量200kg・かご床面積1.3㎡以下・昇降工程の下限や上限なし。住戸が設置対象。定期検査不要。
  • 常用エレベーター:定員・積載量などはメーカー・サイズによって異なるが、6~9名ほどが乗れるサイズ。商業施設やホテルなどで使用される。定期検査が必要。
  • 寝台用エレベーター:定員・積載量などはメーカー・サイズによって異なるが、ストレッチャーやベッドに加えて、付き添いの医師・看護師・家族や医療機器などが十分に同乗できる広さ。総合病院を中心に使用されている。定期検査が必要。

上記の中でも、常用エレベーターは商業施設をはじめとした多くの建物に設置されているため、見た経験がある人が多いのではないでしょうか。

また、エレベーターはホームエレベーターと業務用エレベーター(小規模建物用小型エレベーター・常用エレベーター・寝台用エレベーターなど)に大別する見方もあります。

エレベーターを新設するときの費用相場

本章では、エレベーターを新設するときの費用相場を解説します。

相見積もりを取得して比較するときに、判断材料のひとつとしてご活用ください。

1.業務用エレベーターの新設費用相場は「2,300~3,800万円」

業務用エレベーターを新設する際の費用相場は、設置するエレベーターのサイズや昇降工程の長さなどによって左右されますが、2,300~3,800万円ほどです。

費用は建物の構造や周囲の環境によっても左右されますが、建築時にゼネコンが一手に引き受けるケースが多く見られます。

なお、本章で解説した費用相場は、建物の新築時にエレベーターを新設したときを想定しています。

既存の建物にエレベーターを新設する場合は、建物の構造変更費用が加わるため、上記の費用相場よりも大幅に高額になる場合も。

既存の建物にエレベーターを新設するときの費用相場は、一概にいくらとは言えないため、業者に確認するのが確実です。

2.ホームエレベーターの新設費用相場は「270~570万円」

ホームエレベーターは、中規模程度のリフォームを実施しながら実施するのが一般的で、設置工事を含めた費用相場は270~570万円ほどです。

ただし、建物の状況によっては費用相場を上回るケースもあるため要注意。

ホームエレベーターの設置費用が相場を上回るケースは、おもに以下のような場合です。

  • 建物が工事困難な場所にある
  • 建物の強度を向上する工事を要する

上記のようなケースでは、リフォームよりも建て替えたほうがコストを削減できることもあります。

そのため、ホームエレベーターの設置時は、どのような手法が適しているのかを業者と打ち合わせるのが大切です。

3.エレベーターの増設は「要相談」

「エレベーターの数を増やしたい」「エレベーターの昇降工程を延長したい」といった場合は、建物やエレベーターの状態によって相場が大きく変動するため、明確な相場はありません。

そのため、どの程度の費用がかかるのかを業者に相談し、相見積もりを取得して比較検討しましょう。

なお、エレベーターの増設は、建物やエレベーターの状態によって建て替えたほうが低コストな場合があります。

上記の点に留意して増設を検討してください。

エレベーターの維持費用相場

エレベーターは、小規模建物用小型エレベーターを除いて、法定点検が必要です。

さらに、消耗品の交換をはじめとした定期的なメンテナンスが欠かせません。

本章では、エレベーターの維持費用の相場を解説します。

1.業務用エレベーターの維持費用相場は「84~106万円」

業務用エレベーターの維持費用は、どのような形態の保守契約を結ぶかによって異なります。

業務用エレベーターの保守契約は、おもに下記の2種類です。

  • POG(Parts・おいl・Grease)契約:年1回の保守点検を中心として、エレベーターの清掃・点検・オイル補給・消耗品の交換を実施。1~5万円/月が費用相場。
  • フルメンテナンス契約:POG契約の内容に加えて、その都度発生する部品交換・修理代金も含めた契約。2~6万円/月が費用相場。

大規模なオフィスビルや商業施設など、使用頻度の高いエレベーターはフルメンテナンス契約を結ぶのが一般的です。

また、エレベーターの種類や大きさによっても異なりますが、電気代は120~240万円/年ほどが目安です。

なお、エレベーターの保守点検の費用相場は「エレベーター保守点検の費用相場とは?基礎知識や業者の選び方も解説」をご覧ください。

2.ホームエレベーターの維持費用相場は「16~21万円」

ホームエレベーターの維持費用は、使用頻度やメンテナンス契約内容によって変動します。

POG契約とフルメンテナンス契約を選ぶときのポイントは下記の通りです。

  • POG契約:新設したエレベーターや、使用頻度が少ないエレベーター向け。
  • フルメンテナンス契約:年式が古いエレベーターや使用頻度が高いエレベーター向け。

ホームエレベーターの場合は、下記のような費用も把握すると管理しやすいでしょう。

  • 固定資産税:本体価格の50~60%程度。約20,000円が目安。
  • 電気代:約900円/月が目安。(機種・電力会社などによって変動あり)

電気代の目安は、使用回数によっても異なるため、業者に確認してシミュレーションしてもらうのが確実です。

エレベーターリニューアルの費用相場

エレベーターは、耐用年数を迎えた・トラブルが増えた・生産パーツの供給が終了した、などのタイミングでリニューアルの検討が必要です。

本章では、エレベーターのリニューアル費用相場を解説します。

1.業務用エレベーターのリニューアル費用相場は「400~2,500万円」

業務用エレベーターのリニューアル費用は、工事の内容に応じて、下記のように変動します。

  • フルリニューアル工事:既存エレベーターを撤去して新たな設備を設置。1,200~2,500万円が目安。
  • 制御リニューアル工事:制御盤や電気系統を更新する工事。400~700万円が目安。
  • 準撤去リニューアル工事:主要部品を部分的に交換し、再利用できる部品を活用する工事。700~1,500万円が目安。

どの工事が適しているかは、業者に現状を確認してもらいながら検討しましょう。

リニューアル工事の詳細は「エレベーターリニューアルのタイミングはいつ?理由や費用目安も解説」で解説しています。

2.ホームエレベーターのリニューアル費用相場は「要相談」

ホームエレベーターのリニューアル費用相場は、明確なものはありません。

なぜなら、エレベーターの状態に加えて、建物の状態が費用に影響するためです。

たとえば、雨漏りに気付かず、放置していた建物は躯体の損傷に起因して改修工事が必要となるかもしれません。

雨漏りは、壁の中でとどまっている場合もあるため、不安な場合は調査を依頼しましょう。

雨漏り調査については「雨漏りの原因とは?調べ方のポイントや発生後の注意点も解説」をご覧ください。

エレベーターの維持費用をコストダウンする2つのポイント

エレベーターの設置費用は、補助金をはじめとした制度の活用によって削減できます。

しかし、維持費用をコストダウンするのは難しいものです。

本章では、エレベーターの維持費用をコストダウンする2つのポイントを解説します。

ポイント1.独立系エレベーター業者を選ぶ

エレベーター業者は、大きくメーカー系と独立系に分類され、それぞれの特徴は下記の通りです。

  • メーカー系:エレベーターメーカー傘下のメンテナンス業者。部品供給や技術サポートがスムーズな反面、開発・製造にかかるコストが上乗せされるため料金が高く、対応可能なメーカーに限りがある。
  • 独立系:エレベーターメーカーの傘下ではないメンテナンス業者。複数メーカーに対応でき、価格競争によって低価格でサービスを提供している。ただし、信頼できる業者探しが難しい場合がある。

どの業者に依頼するのかを検討する労力はあるものの、独立系のエレベーター業者を選ぶことでコストダウンにつながります。

独立系エレベーター業者の選び方は「独立系エレベーター管理会社のおすすめ3選!選ぶときのポイントも」をご覧ください。

ポイント2.定期的にメンテナンスを実施

エレベーターを長く利用するには、定期的にメンテナンスを実施することが大切です。

定期的なメンテナンスにより、部品の劣化や故障を未然に防止でき、大きなトラブルによる予定外の出費を抑えられます。

定期的なメンテナンスは、エレベーターの安全な利用という観点からも大切です。

最近では、2025年2月27日に、エレベーターの故障が原因と思われる死亡事故が発生しました。

メンテナンスによって、事故を完全に防止できるわけではありませんが、リスクの低減に有効なのは明白です。

エレベーターは、定期的なメンテナンスを実施して安全性を保ちましょう。

エレベーターの新設・維持費用でお悩みの方へ

本記事では、エレベーターの新設・維持費用相場や維持費用を削減するポイントを解説しました。

エレベーターにかかる費用は、削減が難しいものもありますが、メンテナンス料金は削減できる可能性があります。

当メディアを運営する株式会社ギアミクスは、エレベーターのメンテナンスを請け負っております。

エレベーターのメンテナンス依頼先でお悩みの際は、ぜひお問い合わせください。