過去のエレベーター事故事例から学ぶ|原因・対策・責任範囲まで紹介

エレベーターは日常生活に欠かせない移動手段ですが、予期せぬ事故が発生することがあります。

メンテナンスの不足や設備の老朽化、人為的なミスなどが原因で重大な事故につながるケースも少なくありません。

「過去にどのようなエレベーター事故が発生したのか」「事故を防ぐためには何をすべきか」と疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、実際に発生したエレベーター事故の事例を紹介し、原因や対策について解説します。

管理者やビルオーナーの方は、エレベーターの安全性を確保するためのポイントをぜひ参考にしてください。

近年発生したエレベーター事故事例

エレベーターは日常的に使われる設備ですが、点検不足や設備の老朽化、人為的ミスによって事故が発生することがあります。

商業施設やオフィスビル、マンションではエレベーターの利用頻度が高く、事故リスクも無視できません。

実際に発生したエレベーター事故の事例を紹介し、原因や背景について解説します。

事例1.エレベーターのカウンターウエイトと搬器に挟まれ窒息死

エレベーターのメンテナンス作業中に、作業員がカウンターウエイトとエレベーターの搬器(かご)に挟まれ、窒息死した事例です。

カウンターウエイトはエレベーターのバランスを取るために設置されているもので、通常は安全装置によって一定の動作範囲内に収まるよう設計されています。

しかし、安全装置が正しく作動せず、作業員が挟まれる事故が発生しました。

事故の背景には、作業手順の不備や安全装置のメンテナンス不足が考えられます。

参照:職場のあんぜんサイト:労働災害統計

事例2.作業者が屋上駐車場から自動車専用エレベーターに誘導中墜落

警備会社の作業員が、自動車専用エレベーターを誘導している最中に誤って搬器から墜落し、死亡した事故です。

自動車専用エレベーターは、車両の積載と運搬を目的としているため、安全柵や誘導灯が十分に整備されていないケースがあります。

事故の原因として、以下の点が挙げられます。

  • 作業エリアの安全確保が不十分だった
  • 操作ミスや誘導の方法が適切でなかった
  • エレベーターの安全装置やガイドレールの不備

自動車専用エレベーターを含む特殊用途のエレベーターでは、利用者と作業員の双方が安全を確保する対策が必須です。

参照:職場のあんぜんサイト:労働災害統計

事例3.エレベーターに挟まれ死亡

乗降中のエレベーターが誤作動し、乗客がエレベーターのかごと床の間に挟まれ、死亡した事故です。

エレベーターの扉は通常、センサーや安全装置によって乗降者を感知し、障害物がある場合には開いたままになるよう設計されています。

しかし、センサーが正しく作動せず、エレベーターが動いてしまった可能性が高いです。

戸開走行保護装置(UCMP)の不具合や、点検不足が主な原因とされています。

参照:失敗学会

事例4.扉に衝突又は接触

エレベーターの扉が閉まる際に乗客が衝突し、けがを負った事故です。

エレベーターの扉には、安全装置としてセーフティエッジや赤外線センサーが取り付けられていますが、適切に機能しなかった可能性があります。

特に高齢者や視覚障害者は、エレベーターの扉の動作は予測しにくく、事故につながるリスクが高いです。

エレベーターの安全装置の点検や、利用者向けの注意喚起が重要といえます。

参照:届け出のあった事故事例一覧/大阪府ホームページ

事例5.閉じ込め

エレベーターの閉じ込め事故は定期的に報告されています。

停電や機械の故障が主な原因です。

閉じ込め発生時には、インターホンや非常用ボタンで管理センターへ連絡するように推奨されています。

停電時でも一定時間エレベーターを動かせるバッテリー駆動の非常用装置導入により、リスクを低減する取り組みが進められています。

参照:届け出のあった事故事例一覧/大阪府ホームページ

事例からわかる!エレベーター事故の原因

エレベーター事故の事例を分析すると、以下の5つの原因が共通しています。

  • メンテナンス不足
  • 設備の老朽化
  • 安全装置の不具合
  • 人為的ミス
  • 自然災害

事故のリスクを放置すると、住民や利用者の安全が脅かされるだけでなく、管理者の責任も問われる可能性があります。

エレベーター事故を未然に防ぐためにもぜひ把握してください。

メンテナンス不足

エレベーター事故の原因の一つに、定期的な点検やメンテナンスが適切に実施されていないことが挙げられます。

エレベーターは複雑な機械であり、点検を怠るとさまざまな不具合が生じます。

  • ブレーキの摩耗による停止異常
  • ワイヤーロープの劣化による断裂リスク
  • センサーの故障による誤作動

管理者は、法定点検を遵守し、信頼できる業者に保守管理を依頼しましょう。

設備の老朽化

エレベーターの寿命は、20〜25年が一般的です。

老朽化が進んだエレベーターは、以下のような問題を抱えている可能性があります。

  • 制御盤が旧型で、緊急時に適切な対応ができない
  • ワイヤーロープの耐久性が低下し、断裂の危険がある
  • ドアの開閉装置が古く、挟まれ事故のリスクが高い

設備の老朽化による事故を防ぐためには、リニューアルや部分改修を計画的に実施することがおすすめです。

安全装置の不具合

エレベーターには、利用者の安全を守るために多くの安全装置が搭載されています。

しかし、安全装置が正常に作動しないと、重大な事故につながる可能性が高いです。

  • 戸開走行保護装置が作動せず、ドアが開いたまま昇降してしまう
  • 非常停止装置が誤作動し、急停止や急降下が発生する
  • インターロック装置の不具合により、乗降中にドアが閉まってしまう

エレベーターの安全装置は、定期的な点検と適切なメンテナンスを行い、確実に機能させることが大切です。

人為的ミス

エレベーター事故の中には、利用者や作業員のミスによって発生する場合もあります。

  • 無理にドアをこじ開けようとする
  • 荷物やリードが挟まった状態でエレベーターを動かす
  • 点検作業中に誤って操作盤に触れる

管理者は、利用者へ正しい使い方を周知することが求められます。

想定外の自然災害

地震や台風などの自然災害が原因で、エレベーター事故が発生する場合も少なくありません。

  • 地震時にエレベーターが急停止し、閉じ込め事故が発生する
  • 停電によってエレベーターが停止し、利用者が中に取り残される

自然災害のリスクを軽減するためには、地震時管制運転装置や非常用バッテリーの導入が有効です。

エレベーター事故の責任は誰にあるのか?

エレベーター事故が発生した際、その責任は誰が負うのでしょうか。

管理者やメーカー、保守業者の責任範囲について解説します。

管理者・オーナー

マンションや商業施設の管理者、ビルオーナーは、エレベーターの安全性を確保する義務があります。

建築基準法や労働安全衛生法に基づいた点検を適切に実施しなければなりません。

建築基準法第8条によると、建物の所有者が建築物を常に適法な状態に維持する責任が定められています。

なお、建築基準法第12条第3項では、建物の所有者はエレベーターなどの昇降機を定期的に点検して結果を特定行政庁に報告する義務を負うと記載されています。

定期的な点検を行っていない場合、管理者が法的責任を問われる可能性が高いです。

メーカー・保守業者

エレベーターのメーカーや保守業者は、設備の適切な運用や安全性の確保に関して責任を負います。

エレベーターの事故が発生した場合、メーカーや保守業者が適切な点検を行っていなかったことが判明すれば、損害賠償や法的責任を負う可能性があります。

エレベーター事故を未然に防ぐための安全対策

エレベーター事故を防ぐためには、日頃から安全対策を徹底することでリスクを軽減できます。

以下のような安全対策を実施しましょう。

  • 定期的な保守・メンテナンスの実施
  • 最新の安全装置の導入
  • 老朽化したエレベーターのリニューアル
  • 利用者への適切な使用方法の周知

それぞれの対策について紹介します。

定期的な保守・メンテナンスをする

エレベーターの安全性を維持するためには、定期的な保守・点検が欠かせません。

エレベーターの部品やシステムは経年劣化するため、メンテナンスを怠ると事故の原因となります。

  • ブレーキやワイヤーロープの劣化チェック
  • 制御盤の異常確認
  • センサーや非常ボタンの動作確認

専門の保守業者に依頼し、定期的に実施することが大切です。

安全装置を導入する

エレベーターに安全装置を導入すれば、事故リスクを軽減し、トラブル時の被害を最小限に抑えられます。

主な機能は、以下のとおりです。

  • 戸開走行保護装置:エレベーターの扉が完全に閉じる前に動かないよう制御し、乗降時の事故を防ぐ
  • 地震時管制運転装置:地震を感知すると、エレベーターを最寄りの階に停止させ、利用者の閉じ込めを防ぐ
  • 非常停止装置:エレベーターが異常な速度で動いたり急降下したりした場合に、自動でブレーキをかけて停止させる

インターホンや遠隔監視システムを導入すると、閉じ込めが発生した際にも迅速な対応が可能です。

点字表示や音声案内などのバリアフリー対策を取り入れると、視覚や聴覚に障がいのある方でも安心して利用できます。

古いエレベーターをリニューアルする

古いエレベーターを使い続けると、安全性や快適性の低下につながる可能性があります。

最新の安全装置が搭載されていないエレベーターでは、事故リスクが高まるため、定期点検に加え必要に応じたリニューアルが重要です。

老朽化したエレベーターは部品供給が終了していることが多く、故障時の修理が困難になる場合も。

突発的な運行停止を防ぎ、安定した運用を維持するためには、計画的なリニューアルが欠かせません。

また、エレベーターの状態は建物全体の資産価値にも影響します。

適切なメンテナンスや更新を行うことで、安全性を向上させるだけでなく、入居率や賃料の安定化にもつながります。

※エレベーターのリニューアルについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
エレベーターリニューアルのタイミングはいつ?理由や費用目安も解説

適切な利用方法を周知させる

エレベーターを安全に利用するためには、住民や従業員に正しい使い方を周知することが重要です。

  • 定員オーバーを避ける
  • ドアが閉まる際に無理に乗り込まない
  • 荷物やリードが挟まれないよう注意する
  • 非常ボタンの使い方を事前に確認する

注意喚起を行い、利用者の安全意識を高めましょう。

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エレベーターの安全を維持するためには、信頼できる保守業者に定期点検を依頼することが不可欠です。

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ビルオーナーや管理者の皆様は、ぜひギアミクスのサービスをご検討ください。