近年、地球温暖化や燃料問題から企業にも省エネが求められています。
中でも製品のエネルギー消費効率を改善するため、トップランナー制度が注目されてきました。
トップランナー制度に適合した製品の使用は、コストの低減や快適性の向上などが期待できます。
しかし、トップランナー制度が適用される製品の幅は広く、公的なサイトを見てもよくわからないと課題を抱えている企業も少なくありません。
本記事では、トップランナー制度の概要について詳しく解説します。
トップランナー制度について知りたい企業は、ぜひ参考にしてください。
目次
トップランナー制度とは?
トップランナー制度とは、機器のエネルギー消費効率の決め方の1つです。
日本独自に制定した方式で、基準値を策定した時点で最もエネルギー効率に優れた機器の数値を超えるのを目標とする「最高基準値方式」に基づく方法になっています。
最高基準値方式について、自動車を例にして考えてみましょう。
基準値を策定する年に販売された自動車の中で、燃費が15km/Lという自動車が最も燃費が良い「トップランナー」と仮定します。
翌年の基準値は15km/Lに決定し、次年以降は燃費が15km/Lの自動車を目標として、各メーカーは開発を進めていきます。
より燃費の良い自動車が販売されるようになり、消費者はガソリン代が安く済み、エネルギー不足の解消が見込まれる可能性が高いです。
なぜトップランナー制度が設けられたのか
省エネと経済的な発展を目指し、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」が1979年に改正されて採択されました。
「なぜトップランナー制度が設けられたのか?」その背景を解説します。
理由1.日本のエネルギー供給構造が脆弱
2021年の経済産業省の調査によると、日本のエネルギー自給率はわずか13%です。
一方でエネルギーの消費量は減少傾向ですが、1965年度と2022年度を比較すると消費量の高さがわかります。
現状のままでは、海外からのエネルギー供給が途絶えると国そのものが破綻する可能性は否定できません。
トップランナー制度は、日本のエネルギー供給構造が脆弱な点をカバーするのが目的の1つです。
理由2.1970年代のオイルショックを経験
日本は戦後に大量の石油を輸入することで、急速な産業と経済発展を遂げてきました。
しかし、1970年代には2度のオイルショックを経験しています。
オイルショックをきっかけに、産業部門は少ないエネルギーでの生産を続けざるを得ない状況に追い込まれました。
エネルギーの合理的な使用について注目が集まり、省エネに取り組むようになりました。
国内では省エネ法が制定され、結果的に産業部門のエネルギー消費量の一時的な抑制に成功。
次に民生・運輸部門でのエネルギー消費量を抑制することへの取り組みが開始されました。
オイルショックのようなエネルギーの枯渇危機は、社会や経済に与える影響は計り知れません。
有限な資源を無駄に消費しないために、省エネの重要性が求められるようになりました。
トップランナー制度の対象機器とは?
さまざまな機器を開発・導入する企業なら、どのような機器がトップランナー制度の対象になっているのかは気になるでしょう。
トップランナー制度の機器・建材に関する対象機器について詳しく解説します。
トップランナー制度対象機器は32種類
トップランナー制度の対象機器は以下の通りです。
- 乗用自動車
- エアコンディショナー
- 照明器具
- テレビジョン受信機
- 複写機
- 電子計算機
- 磁気ディスク装置
- 貨物自動車
- ビデオテープレコーダー
- 電気冷蔵庫
- 電機冷凍庫
- ストーブ
- ガス調理機器
- ガス温水機器
- 石油温水機器
- 電気便座
- 自動販売機
- 変圧器
- ジャー炊飯器
- 電子レンジ
- DVDレコーダー
- ルーティング機器
- スイッチング機器
- 複合機
- プリンター
- ヒートポンプ給湯器
- 交流電動機
- 電球
- ショーケース
- 断熱材
- サッシ
- 複層ガラス
引用元:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー消費機器製造事業者等の省エネ法規制」
2017年には「準建材トップランナー制度」も制定されています。
現時点では、準建材トップランナー制度の対象になるのは「吹付け硬質ウレタンフォーム」のみです。
吹付け硬質ウレタンフォームについては、経済産業省が発表したガイドラインを参照ください。
エネルギー消費効率の高い商品のみが該当
画像出典:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー消費機器製造事業者等の省エネ法規制」
トップランナー制度では、策定した基準値を超えた中でも、特にエネルギー効率の良い商品(先頭を走る=トップランナー)が該当となります。
トップランナー制度に該当する商品の割合は全体の50%とされています。
例えば基準値をクリアしたエアコンが10台あれば、エネルギー効率のよい上位5台までが対象となる仕組みです。
トップランナー制度を満たす3つのメリット
トップランナー制度で策定される基準値を超える製品の開発は大変です。
企業が効率の良いエネルギー消費を意識しながら、苦労して開発をすすめるメリットをご存知でしょうか。
トップランナー制度を満たす製品開発のメリットを詳しく解説します。
メリット1.トップランナー制度を満たして競争力をアピール
トップランナー基準は定期的に改正され、策定される基準値は年々向上しています。
企業がトップランナー基準を満たす製品を開発するためには、より高度な技術力が欠かせません。
企業の技術力を向上すれば、製品開発が促進され、競争力を強化することにつながります。
企業の競争力をアップさせられるのは、近年叫ばれるIT化やDXだけではありません。
トップランナー制度は、目に見えやすいグローバル社会にも通じる競争力として、企業の力になります。
メリット2.トップランナー制度を満たして環境問題の解決に貢献
トップランナー制度を満たす製品の開発は、人々の暮らしを豊かにするだけではありません。
エネルギー消費量が少なく、CO2排出量も少ないため、環境負荷を低減することが可能です。
エネルギー消費量の削減は、以下のような環境問題への効果が見込めます。
- 温室効果ガスの排出量削減
- 酸性雨の原因となる二酸化硫黄(SO2)や窒素酸化物(NOx)の排出量削減
- 石油や天然ガスなどの有限な資源を保護
地球温暖化などの環境問題は、企業にとっても大きな課題です。
トップランナー制度を満たす製品を使用することで、企業は環境問題解決に貢献できます。
近年、企業の環境への取り組みが重要視されています。
環境に配慮した製品の開発や環境負荷の低減は、企業のブランドイメージの向上にもつながるでしょう。
メリット3.トップランナー制度を満たして顧客満足度の向上
企業がトップランナー基準を満たした製品を開発・販売することで、顧客満足度の向上が見込めます。
近年、BtoB、BtoCに関わらず環境問題への関心が高まっており、環境に配慮した製品が支持されるようになりました。
顧客ニーズを満たした製品が購入できれば、顧客満足度が高まり、企業への信頼や愛着を高めることが可能です。
製品を開発した企業も、市場シェアの拡大や売上増加を期待できます。
メリット4.トップランナー制度を満たしてコスト削減
コスト削減はトップランナー制度の中でも、最も実感しやすいメリットです。
トップランナー基準を満たした製品はエネルギー消費量が少ないため、電気代やガス代などのコスト削減効果が期待できます。
また、長寿命設計となっているため、製品の買い替え頻度を減らすことも可能です。
例えば、年間10万円の修理やメンテナンスコストがかかっている企業が、トップランナー基準を満たした製品を導入すると仮定しましょう。
故障率を50%まで削減できれば、年間5万円の修理・メンテナンスコストの削減が見込めます。
廃棄までの期間が長くなれば、廃棄にかかるコストの削減も可能です。
トップランナー制度のよくある質問とは?
トップランナー制度に関するよくある質問を紹介します。
質問1.トップランナー制度に罰則はあるか
省エネ法では、目標年度に基準を達成しなかった場合に、未達成の理由や今後の対応を報告する義務が定められています。
しかし、上記の対応後も改善が不十分だった場合は経済産業大臣より勧告を受け、勧告に従わなければ事業者名の公表・命令などの措置となる場合も。
さらに、命令に従わなかった場合は100万円以下の罰金に処されます。
質問2.トップランナー制度のラベリングはどうする
トップランナー制度に該当した製品に応じて、使用されるラベルは3種類あります。
1つは冷蔵庫やエアコンなど、ラベルを貼るスペースが十分な製品に使用される「統一省エネラベル」です。
画像出典:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー消費機器の小売事業者表示制度について」
統一省エネラベルには、省エネ性能が星を用いて表記されるほか、省エネ基準達成度・年間消費電力量・年間電気量のめやす・目標年度などが記載されます。
統一省エネラベルの星評価は、1つ星(省エネ性能が最も低い)から5つ星(省エネ性能が最も高い)までです。
目標年度は特定のカテゴリーのすべての製品が、指定された省エネ基準を達成または超える必要がある年を示します。
対して電球のようなサイズの小さい製品には「ミニラベル」が使用されます。
画像出典:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー消費機器の小売事業者表示制度について」
ミニラベルはスペースが限られているため、評価点と星の数だけが表記されています。
3つ目の簡易版ラベルは、星で表される省エネ性能が記載されていません。
画像出典:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー消費機器の小売事業者表示制度について」
しかし、省エネルギーラベルと年間目安エネルギー料金など、機器市場や特性に応じて表示する項目はきちんと記載されています。
記載される情報は経済産業省のリサーチによって判明した、省エネ製品の購入につながる情報です。
トップランナー制度は、消費者に対して詳細に情報提供を行うことで、省エネ製品の購入を促進し、エネルギー節約と環境保全に貢献しています。
質問3.トップランナー制度の補助金はあるか
現在、中小企業向けに経済産業省が実施しているトップランナー制度(省エネ)に関する補助金は以下のとおりです。
- 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金
- 省エネルギー設備投資に係る利子補給金助成事業費補助金
- 中⼩企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業
- 中小企業等に対するエネルギー利用最適化推進事業費補助金
- ⾼効率給湯器導⼊促進による家庭部⾨の省エネルギー推進事業費補助⾦
- 住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費補助金
- AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金(準備中)
- 脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム
参考:省エネポータルサイト
トップランナー制度には、建築物・住宅に関わる補助金もあります。
主な補助金の詳細は以下のとおりです。
- ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)導入・実証支援:気密性・断熱性に優れ、太陽光をはじめとする自家発電を取り入れた住宅購入者が対象。自家発電の消費率が20%ではZEH、25%以上はZEH+となる。
- 次世代省エネ建材支援事業:断熱材・ガラス・サッシなど、省エネリフォームの工期短縮が可能な建材や、調湿機能をはじめとした省エネ以外の価値を提供できる建材が対象。省エネリフォームを促進するのが目的で、補助率は1/2。
引用:経済産業省 資源エネルギー庁 「令和5年度のZEH関連の補助事業について」
補助金の申請条件などは変更される可能性がありますので、補助金対象に該当する方はぜひチェックしてみてください。
トップランナー制度の該当製品を使用したビルメンテナンスを検討の方へ
本記事ではトップランナー制度の詳細とともに、メリットやよくある質問について詳しく解説しました。
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