キュービクルは、高圧電力を日常生活でも利用できる電圧に変換する便利な機器です。
しかし、電力負荷は一般に遅れ力率で、せっかく受電した電力は効率的に活用できません。
効率よく電力を活用したいなら、高圧進相コンデンサを設置しましょう。
高圧進相コンデンサは力率を改善し、無効電力を減らすことで電気料金の削減に役立つ機器です。
本記事では、キュービクルの導入メリットや高圧進相コンデンサの役割、選定方法、設置・点検の注意点を紹介します。
電気の無駄を抑えたい、電気料金を削減したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
キュービクルとは
商業施設やビルの屋上、駐車場に設置されている金属性の外箱を見かけたことありませんか。
キュービクルとは、高圧電力を日常生活で利用できる電圧に変換する機械を収めた設備です。
一般的に、変圧器・区分開閉器・断路器・遮断器・保護継電器・制御装置・計測機器・低圧配電設備で構成されています。
キュービクルを導入するメリット
キュービクルを導入する主なメリットは以下の4つです。
- 電気料金・経費を削減できる
- 安全性が高くメンテナンスがしやすい
- 設置が短期間で済む
- 狭いスペースでも設置可能で場所を取らない
商業施設やビル、工場のように大量の電気を必要とする事業所では、高圧受電契約が結べます。
高圧電力は低圧電力の電気料金単価と比較して安く設定されているため、電気料金を抑えることが可能です。
キュービクルは、金属製の外箱にさまざまな機器が収納されているのが特徴といえます。
感電や停電などのトラブルを防ぎ、屋外に設置しても小動物の侵入や風雨などの影響を軽減することが可能です。
高圧進相コンデンサとは
高圧進相コンデンサは、「Static Capacitor」の略称から「SC」とも呼ばれています。
キュービクルや受電所などの高圧受電設備で使用される電気機器です。
電力会社から供給された高圧電力は、変圧器を利用して200Vや100Vまで降圧され、負荷の動力として使用されます。
しかし負荷は力率の遅れになる場合があり、力率が悪いままでは負荷では使われない「無効電力」が発生し、受電した電力を効率よく活用できません。
高圧進相コンデンサは、負荷の遅れ位相を強制的に進めることで、力率改善を実現します。
力率が100%に近づけば近づくほど、受電した電力を効率よく活用可能です。
需要家にとっては、電気料金の割引を受けられるメリットがあります。
高圧進相コンデンサの種類
高圧進相コンデンサは大きくわけて、油入自冷式とガス封入式の2種類です。
それぞれの特徴を解説します。
油入自冷式
油入自冷式は、一般的に普及しているタイプで、コンデンサ容器内を絶縁油で満たしパッケージしたものです。
高圧進相コンデンサの内部は、素子や導体を周りから絶縁するために絶縁体で満たされています。
その絶縁体が誘電率や熱伝導率、絶縁性能に優れる油で満たされているため、小型軽量かつ安価です。
以前は、現在製造・使用が禁止されている絶縁油にPCB(ポリ塩化ビフェニル)が混在していました。
古い機種だと含有している可能性があるため、撤去の際は気をつけてください。
ガス封入式
ガス封入式は、コンデンサ容器内に窒素ガスを封入したものです。
絶縁油が入っていないため、乾式とも呼ばれています。
無害で不燃性のガスを充填しているので、環境にも優しく、火災などの二次災害を心配する必要がありません。
病院や人が集まるビルなどの施設で利用されていますが、油入自冷式と比較して大型で高価な傾向があります。
高圧進相コンデンサの主な2つの役割
高圧進相コンデンサの主な2つの役割を解説します。
力率改善
高圧進相コンデンサは、力率改善に大きく貢献します。
電動機には誘導成分があり、コイルに電気が流れることで、無効電力が発生しがちです。
無効電力が大きくなると、供給される電力である「皮相電力」も大きくなります。
供給しても使用されない電力が大きくなれば、皮相電力に対する有効電力の割合を示す「力率」も低下します。
力率が悪ければ、電力会社は実際に消費される電力以上に電力を供給しないといけません。
高圧進相コンデンサを設置すれば、無効電流と逆方向の電流を流し、力率の遅れを強制的に進ませることが可能です。
電気料金(基本料金)の割引
高圧進相コンデンサを設置すれば、力率が改善されるため、電気料金や基本料金の割引を受けられます。
高圧需要家の電気料金は、以下の様式です。
「電気料金 = 基本料金 + 使用量 + 再エネ賦課金 + 燃料調整費」
基本料金の内訳は、以下の通りです。
「基本料金=契約電力×単価×力率割引」
電力会社は力率の基準を85%とし、高圧・特別高圧では85%を上回れば1%ごとに1%割引、下回れば1%ごとに1%割増と設定しています。
つまり、高圧進相コンデンサを設置すれば、最大で15%の割引を受けることが可能です。
電力会社側にも、高圧進相コンデンサの設置は有益といわれています。
電力会社は、需要家が消費した電力に対して電気料金を請求でき、無効電力分は請求できません。
電力が大きくなれば、電力の大きさに見合った供給設備が必要となり、変圧器の容量や電線のサイズを変更する必要があります。
しかし、高圧進相コンデンサを活用することで、供給設備を効率的に利用できます。
高圧進相コンデンサの選定方法
高圧進相コンデンサの容量選定は、以前は高圧電力を送る配線である三相変圧器の容量の1/3程度といわれていました。
しかし、近年は使用機器の力率が改善されており、1/3程度だとかえって力率が進み過ぎる可能性があります。
進相コンデンサの容量計算方法は以下の通りです。
「コンデンサ容量(kvar)= 負荷容量(kW)× 設置容量係数 kθ(表)」
高圧進相コンデンサの容量は、95%〜98%とされている一般的な目標力率を参考に、負荷の無効電力を想定して選定しましょう。
高圧進相コンデンサを設置する際の注意点
力率改善や電力料金の削減に役立つ高圧進相コンデンサを設置する際には、いくつか注意すべき点があります。
3つの注意点についてチェックしましょう。
直列リアクトルを取り付ける
高圧進相コンデンサを設置する際は、直列リアクトル(Series Reactor)も同時に設置することが原則です。
共に設置することは、JIS(日本産業規格)では1998年に、高圧受電設備規定では2014年に定められました。
電路に高圧進相コンデンサを投入すると、定格電流の数倍から十数倍もの突入電流が流れてしまいます。
また、交流の波形をひずませ、電気機器や設備に対し悪影響を及ぼす高調波を増大させる可能性も。
直列リアクトルを接続すれば、突入電流と高調波を抑制し、コンデンサや電子機器の損傷を防ぎます。
高圧進相コンデンサの導入時には忘れずに、直列リアクトルを接続しましょう。
保安点検を実施する
一般社団法人日本電機工業会は、高圧進相コンデンサ設備の更新時期を「15年」と推奨しています。
高圧進相コンデンサは一旦電源が投入されると、常に全負荷で稼働し続け、開閉のたびに大きな突入電流や過渡過電圧にさらされるからです。
また、コンデンサのみならず、キュービクル本体の点検も定期的に実施しましょう。
キュービクル本体の交換時期は、部品の耐用年数である「8〜15年」が目安といわれています。
耐用年数を超えての使用は、電力料金がかかるだけでなく、キュービクル本体や電気機器の故障や事故の原因の1つです。
思わぬ波及事故や損失リスクを未然に防ぐためにも、保安点検は欠かせません。
PCB含有の有無を確認する
高圧進相コンデンサに、PCBが使用されているかどうかを確認しましょう。
PCBとはポリ塩化ビフェニル化合物と呼ばれる絶縁油で、有害性物質です。
1970年頃に国内での製造は禁止されましたが、設置する高圧進相コンデンサが何年に製造されたものか必ず確認しましょう。
高圧進相コンデンサに取り付けられている銘板には、型式や製造年月などが記載されています。
もしPCB含有が発覚したなら、普通の産業廃棄物では処分できないので注意してください。
環境省によって「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB 特措法)が公布され、PCB廃棄物は期限内に処分しないと罰則の対象になります。
産廃処分については、環境省のホームページを確認してください。
キュービクル・高圧進相コンデンサの点検方法
キュービクルや高圧進相コンデンサの保安点検の方法は以下の通りです。
- 外箱の変形や損傷、著しいふくらみ、発錆、腐食
- 油漏れ
- 外箱の異常な温度上昇
- 振動や異常音
- 異臭
- 電流の異常
- 直列リアクトルの異常音
- 接続端子の過熱変色
- 接続端子の緩み
- 断線
「電気事業法」により、電気主任技術者によるキュービクルや高圧進相コンデンサなどの電気機器の定期的な保安点検が義務付けられています。
「月次点検(毎月もしくは隔月1回)」と「年次点検(毎年もしくは3年に1回)」の実施は必須です。
電気主任技術者を雇用できない企業の場合は、「外部委託承認制度」による専門業者への委託もできます。
※キュービクルや高圧進相コンデンサの保安点検の外注について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
キュービクル・メンテナンス会社はどこがいい?選ぶポイントを解説
キュービクル・高圧進相コンデンサを設置してコスト削減をしよう
高圧進相コンデンサの最大の特徴は、力率の改善です。
力率改善により電力を有効活用できれば、需要家は電気料金の割引が受けられます。
電気料金の削減をしたい方や企業は、キュービクルに高圧進相コンデンサを設置しましょう。
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